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「師匠に振り回されて大変だな~。まぁ、俺もスキルってのがどういうのなのか気にはなるが、自分の力を敵に教えないのも当たり前だし、こんな試験で見せるなんてもったいないよな~。まぁ、師匠の言葉には従うのが弟子の務めってもんだ。ほら、全力でかかってきな!」
いや~、多分、俺がぼこられる姿でも見たいんじゃないかな? だいたい、【勇気】に関しては、使う使わないは俺に選択権ないんだけど。……まぁ、方法がない訳じゃないんだけど……やるっきゃないのか。
優真はため息をつくと、自分の腰に携えていた鞘から、一本の刀を抜き放ち、構えをとった。
「おいおい、なんだよその剣は?」
俺の見せた刀に、試験官は驚いたような表情を見せた。
そりゃそうだろ。
俺が村にいる鍛冶屋のおじさんに無理言って作ってもらった日本刀を参考に作った刀。
鍛冶屋のおじさんも知らない刀だったんだ。
とりあえず、能力発動を避けるためのーー
「先手必勝!!」
さっきまで驚いた表情を見せていた試験官だったが、さすがに剣を向けられれば、ぎりぎりではあるが、対処してみせた。
まぁ、反応が遅れてたら、さすがに剣のふりも大雑把になるのも仕方ないか、と相手の対応が悪かったことに理由をつけつつ、今度は本気で打ちにいく。
「なかなかやるじゃないか!」
「それはどうも」
剣と刀が交差し、火花が散る。
試験官の賛辞に礼を言いつつも、その目は相手の動きを捉える。
振りかぶっての攻撃、隙は大きいが、当たればひとたまりもないだろう。
試験官の攻撃はハルマハラさんの多彩で繊細な戦い方とは違い、豪快の二文字がよく似合う戦い方だった。
俺は試験官から距離をとり、刀を鞘に戻す。
それを見た試験官は、不意をつかれたからか、目を見開いてこっちを見ている。
「十華剣式、壱の型」
足に力を込め、相手との間合いを詰めるために、床を蹴る。
「菊一文字!」
その言葉を呟き、抜いていた刀を再び鞘へと戻す。
後ろを振り返れば、そこには倒れた試験官の姿があった。気絶している、と彼の傍に駆け寄り、膝をついた受付嬢のお姉さんが驚きながら言ってきた言葉に驚いた。
予想外だった。まさか棒立ちで受けるとはさすがに思ってなかった。
B級って言うから、てっきり強いのかと思えば、これならライアンさんの方がよっぽど強かったな。
◆ ◆ ◆
優真は離れた距離を一瞬で詰めより、反応すら出来ていないディックの腹部に刀の刃がついていない部分で斬ってみせた。
速さ特化の技とはいえ、まさかの結果で少しがっかりしつつも、自分の技が通用することに喜びを隠せずにいた。
「これで文句ないですか?」
「やればできるじゃないか」
「ありがとうございます」
「とはいっても、あれじゃA級には通用しませんね。帰ったら素振り1000回ですね」
「…………勝ったのに、修行の量増やされるとか納得いかね~」
「なんか言いましたか?」
「……いえ、何も」




