表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/970

8-5

 案内された部屋に入ってみると、そこは頑丈な床があるだけの部屋だった。

 その広い空間には一人の武装した男がいた。


「へぇ、君が新しい冒険者になろうって若人か。なるほどね、俺はディックってんだ。よろしくな!」

「はじめまして。雨宮優真と申します。以後お見知りおきを」

 明るい茶色の男が、俺に声をかけてきた。

 俺は差し出された手を取り、握手を交わす。

 気さくな人という印象を抱いたが、見た感じ強そうではあった。


「今回はB級冒険者であり、ゴーレムスレイヤーの称号を持つディックさんと戦っていただきます。よろしいですね?」

「…………もう一回言ってもらえますか」

「ディックさんと戦っていただきーー」

「いや、もうちょっと最初の方から」

「え~っと、B級冒険者であり、ゴーレムスレイヤーの称号を持つーー」

「無理に決まってるじゃないですか! 何ですかB級って! まだ登録すらされていない俺なんかが勝てる訳がないじゃないですか! だいたいゴーレムスレイヤーってなんなんすか!」


 聞き覚えのない単語と、明らかに強そうなランクに優真は声を荒げて、受付嬢に問いただす。

 しかし、その問いに答えたのはディックと名乗った冒険者だった。

「スレイヤーってのは、モンスターを討伐するともらえる称号だな。俺は一人でゴーレムを倒したという実績が最高だからゴーレムスレイヤーって訳だ。ユウマとか言ったか。お前はモンスターを倒したことあんのか?」

「……そりゃ、ありますけど」

「その中でも一番強いと感じたモンスターはなんだ?」

 ……一番強いって言われたら、……やっぱり亀が強かったな。確かSランクだって言ってたしな。

「え~っと、Sランクの亀ですね。俺はあいつが一番きつかったです」

「Fランクの亀? そんなモンスターいたか?」

 ディックが受付嬢の方へと向くと、受付嬢も自分の記憶から該当するものを探し出す。

「ただの動物なんじゃないでしょうか。おそらく、Fランクにも充たないと思いますよ」


(……あれ? Sランクって言った気がするんだけどFランクってこの人達言ってるよね? なんで?)

『その疑問には、ミハエラが答えさせていただきます。Sランクモンスター個体名ミストヘルトータスを倒したというのは出来るだけ控えてほしいため、ごまかしておきました』

 何時ものようにタッチパネルが出現すると、そう教えてくれた。

 ……なるほど、ミストヘルトータスを倒したことはできるだけ言わない方がいいってことね。


「なんにせよ、早く試練に入りましょう。アマミヤさんもご安心ください。ディックさんは、あなたの腕を見るために行うので全力では行いません」

(ほっ、それなら良かった)

 露骨に安堵した優真をハルマハラは見逃さなかった。


「お待ちなさい。私が育てた弟子の力を甘く見ない方がよろしいですよ。ぜひ()()でかかってきた方が身のためです」

 ……え? ちょっ……ちょっとなに言っちゃってるんですかハルマハラさん!

 話聞いてました? この人B級だって言ってたんですよ! D級のライアンさんや、C級のガルバスさんたちよりもよっぽど強い相手なんですよ!

 俺はあの二人にだって、全然勝ち越せてないのに、B級が全力って俺に勝ち目なんかないじゃないですか!


「あんた、こいつの師匠ってやつか? オーケーオーケー、いいぜ。あんたの言葉に従って全力でやってやるよ。いつでもどうぞ」

(あれ? もしかして試験ってもう始まってる感じ?)


 どうぞと言いながら構えるディックという名の試験官。めちゃくちゃ隙だらけだけど、案外、不用意に隙を狙った敵を返り討ちにするのが、彼の戦闘スタイルなのかもしれない。

 とりあえず、向こうから攻撃を仕掛けてもらって【勇気】によるカウンターでーー

「言い忘れていましたがユウマ君。君にはスキルの使用を禁じます。剣とその身だけで戦ってみなさい!」

 ……勘弁してつかぁさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ