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「いやはや、申し訳なかったなユウマ君。つい、いつもの感覚でやっていましたが、あなたが非国民対象者になりかねないのをうっかり忘れていました」
時折思うんだけど、ハルマハラさんってこういうところがあるよね。
Sランクモンスター引き連れたまま、合流しようとした時もあったし、修行中にうっかり本気で攻撃する時もあるし、本当にそういうところは勘弁してほしい。
正直、素直にお礼を言いたくないレベルですよ。
危うく逮捕されかけたしね。……でもーー
「……いえ、ありがとうございました。師匠がいなかったら、俺は捕まってたでしょうから」
「いえいえ、付き添いとして当然のことをしたまでですよ。ほらほら、お早くお行きなさい。受付の方をお待たせしていますよ」
「はい」
……礼を言いたくない。そんな我が儘を通して、大切な人を失う方が俺には辛い。
あの人には、俺のせいで一生治らない傷を負わせてしまったんだ。それなのに、剣を教えてくれたうえに、ここまでついてきてもらってるんだ。ましてや、ハルマハラさんが、使える技にしてくれたから、十華剣式だって完成したんだ。
俺があの人に文句を言うのは筋違いだ。
…………俺は言われる方であって言う側ではないのだから。
◆ ◆ ◆
最悪な出だしだったが、どうやら冒険者登録は出来そうだ。
「先程は失礼致しました。国の方針にある程度従う必要があるため、どうかご理解願います」
「いえ、お気になさらないでください。早速なんですけど、冒険者登録って可能ですか?」
「勿論ですよ。ただし、試験に合格できたらですね」
…………え? ちょっと待って! そんなの聞いてない!
「そちらの方は、見学なさいますか?」
「お邪魔でなければ是非」
「ではご案内致します。こちらへどうぞ」
受付嬢の丸メガネをかけたお姉さんは、カウンター席を出て、俺とハルマハラさんの二人を促して、通路の方へと進んだ。
…………詳しい説明すらなく。




