43-5
「……これで鉄ちゃんのところは後1勝……しかも、ヨーノルドで1勝取れたのはかなり大きいね。士気も上がるし、何よりも残りの二人は無敗のカリュアドス君と筆頭のメイデンちゃん……これなら、相手がアポロでも勝利の可能性が高い!」
周りの眷族や神達が仲間内で先程の対戦について話しているなか、優真は主神の子どもを司る女神に話を聞いていた。
「……なるほど……ここでカリュアドスさんが勝てばメイデンさん達は2回戦進出って訳ね」
先鋒戦が始まる少し前にパルシアスから聞いた話では、先日会ったカリュアドスという男はここ数百年の成績において、全戦全勝であると教えられていた。
それほどの実力者が次の中堅戦に出てくる。
(これはメイデンさんの出番は無いかもな……)
そう思った矢先、会場中が再び騒がしくなった。
そして、優真も女神に向けていた視線をフィールドに戻す。
そこには2本の鉄剣を腰に携えたシスターの姿が映った。
(メイデンさんが2番手!? ……彼女は大将じゃないのか!?)
対戦相手は未だに出てきていないが、メイデンさんの姿だけは遠目で確認できた。
彼女が出てくる可能性はない。そう思っていただけに、彼女の登場には驚かされた。
「……『神々の余興』において選出なんて自由なのさ。直前で変えるのもありだし、元々の予定にあった3人以外から選ぶのもね。その証拠に、ほら……」
女神様が指し示す方向には、鬣のようないかつい橙色の髪と手に持った神々しい弓矢、上半身裸で腰に巻いた布1枚という個性的な特徴を兼ね備えた壮年の男性が通路から出てきていた。
「もしかしてあれが……太陽神様の眷族筆頭を務めているアポロって眷族なんですか?」
隣の万里華が抱いた疑問に女神様が頷く。
確か彼は大将戦に出る予定だと聞いていた。要するに、中堅戦の者と変わったのだろう。
「それにしても……メイデンさんが出てくる必要は無いだろうに……カリュアドスさんがそのまま戦っても良かったんじゃ……」
「何言ってるんだい、優真君? そんなの簡単じゃないか。メイデンちゃんはこの試合にどうしても出たかったのさ……君に何かを伝える為にね……」
そう言った女神様は少しにやついていた。
それがどういうことなのかを聞こうとしたが、その時、俺の耳に信じられないような言葉が聞こえてきた。
「くたばれくそアマー!」
それは、観客席の方から聞こえた言葉だった。




