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今更ながら、今回の対戦カードは『鉄の女神様チーム』VS『太陽の男神様チーム』というものになっている。
これがこの試合を俺達が見ている理由であり、子どもを司る女神様が絶対に見るべきだと俺を連れ出した試合だった。
現在『ファミルアーテ』で8位の座についているアポロという眷族筆頭が率いる眷族達は強者揃いらしく、実況の天使が現れるまでは太陽の男神様陣営が勝つという声しか聞こえなかった。
それほどまでに不利な対戦なのだろう。なにせ、メイデンさんはファミルアーテにすら入っていないのだから。
『さぁさぁさぁ、先鋒に選ばれた眷族達の紹介だ! 太陽の男神様が選んだ眷族は長年太陽の男神様をサポートしてきた男! ヨーノルド・ヴェルディ!!
対するは! 鉄の女神様が選びし眷族! 去年の秋になったばかりの人間! その硬き肉体は鉄の女神様も惚れ込むほど!! 予選ではたった一人で神を本戦へと導いた男~! その名はウィ~ル!!』
天使クレエラが名前を叫ぶごとに会場は熱気で包まれていく。しかし、優真にとってはそんなことどうでも良かった。鉄の女神が先鋒に出した逞しき肉体を持つ青年に優真は見覚えがあった。
「な……なんであいつがここにいるんだよ?」
その人物はパルテマス帝国で騒動の後、行方不明になっていると皇帝から伝えられた兵士ウィルだった。
「あのウィルって眷族……優真が知ってる人なの?」
優真の動揺に気付いた万里華はそう聞いてくるが、優真自身印象的だったというだけで、詳しいことは何も知らない。
「まぁ詳しくは知らないけど……あいつは俺との戦闘で強者との戦いにこだわってたやばい奴だよ……ホムラが麻酔銃で眠らせてなかったら、あいつのせいでガイベラスの被害がもっと出てただろうな……どんだけ殴っても自分からは絶対に敗北を認めないという強い意思を感じたよ……てか、紹介が本当なら騒動後に眷族にしたのか?」
万里華を含めた彼とどういう関係なのかが気になっていた者達は納得した様子だった。しかし、優真にはどうしても納得がいかなかった。
鉄の女神がいったいどういう考えであの男を試合の流れを左右する先鋒戦に持ってきたのか、ということだ。




