42-11
優真がカウンター戦法をとっている一方で、マルテはキクルを庇いながら、戦場を駆け抜けていた。
「くそっ……しつけぇ……」
マルテが背後をチラリと見てそう言った。そんな彼を不安そうに見つめていたキクルも彼の見た方向と同じ場所を見た。
そこには、半裸の竜人が追いかけてきていた。
「おら待ちやがれ!!」
怒った様子の彼が怒鳴る。
そして、彼の姿が光り始める。
「マルテ!! 来るです!!」
キクルが焦ったようにそう言うが、時すでに遅く、二人の前に、一匹の巨大なドラゴンが現れた。
その獰猛な姿に、マルテは冷や汗を流すが、すぐに足を動かそうとする。しかし、そのドラゴンが翼で風を発生させた瞬間、二人は一瞬で吹き飛ばされ、結界にぶつかってしまった。
どうやら、いつの間にか追い込まれていたようだ。
「……くそっ……大丈夫か……キクル?」
地面に落ちたマルテがそう聞くと、キクルは答えない。体が小さすぎる彼女には、今のでも相当な衝撃だったのだろう。
彼女は気を失っている様子だった。
「ちっ……世話かけさせんな……」
そう言いながら、マルテはそのドラゴンからキクルを隠すかのように、立つ。
キクルが気絶し、筆頭が遠くにいる今、特殊能力を使用しても、効果は十全に発揮できない。ましてや、覚醒していない自分じゃ『竜王』と呼ばれたこの男に勝ち目なんてない。
だが、相手は自分が強いということを証明したいだけの戦闘狂。そして、弱い相手を見下し、工夫して生き残るという考えをバカにし、さっさと追い出したいと考えている。
説得も無意味。懇願は不必要。
この男に目をつけられた時点で自分の敗北は決定なのだ。
(……まぁ……こいつが俺を狙う一番の理由は俺が元人間だからなんだろうな……)
ドラゴンは、目の前で口を開き、ブレスをこちらに向かって吐こうとしていた。当たれば1発で退場間違いなしの攻撃。しかし、避ければ、気絶しているキクルが被害にあってしまう。
(すまんキクル……俺……ここで脱落するみたいだ……)
竜王がブレスの溜めに入るのと同時にキクルを拾い、遠くに投げる。
そして、マルテを竜王のはいたブレスが襲う……筈だった。
しかし、彼にブレスが届くことはなかった。




