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条件が揃わないと最強になれない男は、保育士になりたかった!  作者: 鉄火市
42章:実習生、予選でその力を振るう
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42-10


 刀を構えた優真の姿を見て、囲んでいた眷族達は情けない悲鳴をあげ始める。中には命乞いする者までいた。しかし、それで優真が剣を収めることはなかった。

「……悪いが、俺だって絶対に勝たなきゃいけない理由があるんだ……十華剣式、伍の型、白桜の舞い」

 逃げ腰の敵を優真の刀は逃がさない。

 優真の動きは流れるように、敵の急所をついていく。しかし、血は1滴も出ることはない。

 命が摘み取られることもない。

 受けたダメージは全て、参加者の腕につけられた腕輪が肩代わりしてくれる。ただし、致死量のダメージを受けた者は、死ぬ代わりに退場させられる。

 その結果、優真を囲っていた眷族達は1分も経たずに全員跡形もなく消えてしまった。


 敵を全員倒したというのに、優真の顔は晴れない。

 腕輪の効果で、叫び声を上げない。血が出ることもない。死体を見ることもない。なのに、優真の表情には陰りが見えた。

 例え、腕輪の効果で相手が死なないのだとしても、人を斬る感触が無くなる訳じゃない。峰打ちで行う戦いや、モンスターと戦う時との感覚とも違う。

 あの感触を当然のものとして受け入れてしまいそうになっている自分が怖い。

 人を簡単に殺してしまえる自分が……自分の技が……ただただ怖い。

 しかし、立ち止まる訳にはいかなかった。


 他の者達は、己が主神に認めてもらうため、この場にいる知り合いを倒してでも生き残らなければならない。誰かを蹴落とし、生き残らねばならない。当然、彼らにとって、優真も狙いの一人である。

 ホムラという少女を生き返らせるという望みを果たしたいのであれば、優真は目を血走らせる程、必死になる彼らを斬らねばならない。

 だが、優真は動かなかった。

 それが彼の選択だったからだ。


 ◆ ◆ ◆


 先程、20人以上の眷族達を相手にし、瞬殺してみせた優真。そんな彼に、他の眷族達は近付こうともしなかった。


 眷族には覚醒という段階がある。それは、眷族が主神に認められ、真の力を発揮できる状態だと言われている。

 歳をとらぬ眷族にとって、覚醒するしないは個人の自由だ。

 当然、優真や、ファミルアーテと呼ばれるような眷族達は覚醒している。

 だが、覚醒は簡単にできるようなものじゃない。

 ファルナ達は子どもを司る女神がこの『神々の余興』でどうしても勝ちたいと望んだからこそ、早々に覚醒できた。だが、本来であれば、数百年神につかえた眷族が、ようやく覚醒させてもらえるのだ。


 その為、覚醒はしていないだろうと考えていた他の眷族達は、先程の戦闘を見て、優真が覚醒していることを知り、無闇に近付くことをやめたのである。


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