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「お前にはここで消えてもらう」
多種多様の生物達が自分を囲う光景を見ても、優真の顔に焦りは見られなかった。むしろ、少し愉しそうな笑みを見せた。
「……俺みたいな新人を大勢で囲むなんて……過剰評価しすぎだよね~」
「そうは思わんさ。『処刑人形』をさしで倒した人間……慎重にいって損は無いだろう」
話しながらも、優真は冷静に周りの状況を確認していた。
既に30分の時が経ち、残りは半数の500を軽く下回っているだろう。
そして、自分を囲う眷族の数は20名程……神が送れる眷族の数は最大でも3名のみ……つまりは、同盟か一時的な協力といったところだろう。
先程の3名やキクル達はいないが、実力ありと大雑把に判断した者がちらほらいる。
「……まぁ、大勢でも一人でも、俺には関係無いんだけどね……」
「だったら、証明してみろや!!」
牛の顔に筋肉質な体つきの3メートルはありそうな化け物は、そう叫びながらバトルアックスを振り上げて突進してきた。その合図と共に7名の眷族達がそれぞれ武器を持って突っ込んでくる。
しかし、優真の前で彼らは等しく止まる。
全ての時が止まる中で優真は強調表示されたミノタウロスを含めた8名を流れるような動きで斬っていく。
本来であれば、時が止まるのは彼の行動一つまで。しかし、流れるような動きはまるで8回の時間停止が1回で済まされているかのように見える程、洗練された動きだった。
強調表示が直ぐに変わっていき、誰がされるかなんて普通はわからない。だが、優真はスティルマ大森林で多数対一人を幾度となく経験し、その中で何度も【勇気】を発動させてきた。
時間が停止した世界では、ただのモンスターも眷族も変わらない。ただの動かない的でしかなかった。
8名の眷族を一瞬で全員消してしまった優真に、囲んでいる残りの眷族達は驚愕と恐怖の視線を向ける。
そんな視線の中で優真は口を開いた。
「多人数だろうが、一人だろうが、俺にとっては関係無い。条件さえ揃えば、俺の力は神をもしのぐ。たった20人で……勝てると思うなよ?」




