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スタジアムに入ると、二人の天使が受付のような場所にいた。
二人の天使は俺の姿を見ると、露骨に嫌そうな顔を見せる。その顔で俺もこの天使達の正体を思い出した。
「……なんでこんなところに聖域の天使がいるの?」
その二人は前に聖域内でホムラを探している時に絡んできた二人の天使だった。
「よりによってお前がここの会場かよ」
「お馬鹿! 相手は仮にも眷族筆頭ですよ! 例えお嬢以外の女にうつつを抜かすような駄目男でも敬意を払いなさい! 申し訳ございません優真様。この者には後で言いつけておきます」
「……はは……相変わらずですね……」
本当に棘のある言い方をしてきやがる。隣の奴よりお前の方がむかつくんだよ。とは口が裂けても言えないので、心の中だけで思うことにした。
「というかあんたさ、お嬢になにした訳? 本拠に帰ってきてからお嬢の元気がねぇんだけど」
「……ハナさんが?」
適当に聞き流そうとしていたが、さすがにその言葉だけは聞き逃せなかった。
しかし、詳しい内容を聞こうとしたところで、毒舌天使が右手で遮った。
「いけませんよ。女神様に強く言い聞かされているではありませんか。いくら優真様が婚約者だからといって、他言無用という決めつけを破る訳にはいきません」
「わ……わりぃ……」
「それでは役割を果たす為に案内をさせていただきます」
天使の表情からは絶対にハナさんのことを教えないという固い意思が感じられ、俺はなくなくそれを承諾をした。
「今回のルールはバトル・ロワイアルです。8つの会場にそれぞれ眷族達を送り込み、最後の5人になるまで戦っていただきます。もちろん、同じ神の眷族が二人残った場合はそれらを一人として換算します。……ところで、まさかとは思いますが……お一人で参加なさるのですか?」
「駄目なのか?」
「いえ、それは神の意向ですので我々天使に反対する権利はありません。それでは、ご健闘をお祈りいたします」
「くれぐれもお嬢の顔に泥をぬるんじゃねぇぞ!」
この天使は学ぶという言葉を知っているのだろうか。そんなことを思いながら、隣の天使に頭をひっぱたかれている天使の姿を見ていた俺は、これ以上ここにいる理由もない為、俺は控え室の方に向かうことにした。




