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霧の女神が去ってから10分程が経過し、部屋の中に再び静寂が訪れた。お互いに言葉を発することはなく、置いてあるラノベを読み続けていた。
そんなタイミングで、再びタッチパネルの通知音が部屋に鳴り響いた。
読んでいた本に栞を挟んだ優真は、タッチパネルを操作して、女神にも聞こえるようにした。
『女神様、優真様、次の神様がいらっしゃいました』
正直なところ、これ以上面倒なことが起こるのは回避したかった為、追い返してもらいたかった。しかし、相手が神であるならばそういう訳にはいかないだろう。
実際、女神様の方も億劫そうにしているが、許可を出している。
(……そういえば、また誰が来たのか聞かなかったな……)
部屋に散乱した本だけでも片付けようと思って掃除をしていると、いきなり部屋の扉が開け放たれた。
「フハハハハハハッ!! 我こそは、鉱石の神達を来年度から束ねるよう創世神のお三方に任せられた真なる神、鉄ちゃんである!!! 皆の者!! 頭が高~い!!」
「鉄ちゃん!!?」
黒い衣装に身を包み、キメポーズを恥ずかしげもなく行う銀髪少女という見た目の鉄の女神様が登場した。その瞬間、先程までの怒りが綺麗さっぱり無くなり代わりに一つの単語が頭を支配した。
「ねぇ女神様……俺ちょっと猛烈な腹痛に襲われたから後はよろしく……」
「……優真君……心を読める相手に仮病使うってばかじゃないの?」
それだけは絶対にこいつの口から言われたくなかった俺は、一瞬こいつに殺意を抱いたが、よくよく思い返してみれば自分でもアホっぽいと思ったので、そんなどうでもいいことを考えるのは止めた。そんなことよりも、女神の傍には眷族筆頭がつく挨拶において、鉄の女神様が来たのは非常にまずい。要するにあの人が来るということだ。
しかし、時すでに遅し。
俺が背を向けている扉がゆっくりと開かれた。




