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「優真様、わかってはおられるでしょうが、くれぐれも粗相の無いようにお願いいたします」
「……はは……俺ってそんなに信用無いですか?」
隣に控えているミハエラさんにそう言われ、俺は苦笑するしかなかった。
「もちろん、いち天使として優真様のことを信用してはいます。しかしながら、先日の時空神様の時のように、女神様の信用を地に落とすような振る舞いは控えていただきたいのです」
「……ほんとすんません……」
怒りを感じさせるその笑顔に、俺は恐怖を感じた。こればっかりは完全に自分が悪いので、何も言い返せない。
少しばかし強くなったからって調子に乗るもんじゃないな。……身をもって教えられたよ……。
「……それでは、私はこれで失礼いたします」
「あ、はい。案内ありがとうございました」
ミハエラさんに案内され、本拠のエレベーターで女神様の待つ大部屋に着いた俺は、扉の前でミハエラさんと別れた。
ミハエラさんは俺に会釈した後、裏方の仕事に向かっていき、それを見送った俺はスーツのネクタイをしめ直して、扉をノックした。
「入ってきてくれ」
「失礼します。眷族筆頭の雨宮優真、ただいま参上つかまつりました」
すぐに中から入室の許可が出た為、俺は扉を開けて中に入った。中に入れば、エメラルドグリーンの髪の少女が炬燵の中でだらだらしている様子が視界に入った。
「……何してんすか……」
「いやね……どうせ誰も来ないのにきっちりしてたってつまんないだろ?」
「いや、来ないとは限らないだろ。仮にも女神なんだし……」
「仮にってなんだよ、仮にって」
「そんなだらけた姿見たら、あんたを信仰している信仰者の人達も離れていいくだろうな……」
「……そう言いながらも炬燵に無許可で入ってくる優真君って変な奴だよね~」
「……不老不死になったって寒いもんは寒いんだよ……」
「ははっそりゃそうだ。まぁ……別にいいよ。私達の役割はこうして他の神が来るまで待つことなんだけど、神になったばかりのこの100年でいくつも事件に巻き込まれた駄女神の元に挨拶にくる物好きなんていないだろうさ……」
項垂れる女神は、溜め息混じりの声でそう言うと、炬燵の上に積まれていたラノベを読み始めるのであった。




