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シルヴィに土下座して謝った日から、1週間の月日が経ち、俺は近くの町に赴くこととなった。
そう! 初めて森を出たのである!
そもそも何故町に赴くこととなったのか。それは俺の冒険者登録をするためである。
世界各国に存在する冒険者ギルド。例え、戦争が起ころうと、小競り合いが起ころうと一切の関与をしない特殊な機関である。中立的な立ち位置にありはするものの、もちろん、冒険者個人の自由は保障されている。
そんな冒険者ギルドでは、冒険者カード、通称ギルドカードというものが発行され、これがあれば、冒険者として身分が保証される。
町に入る際の必需品で、これか毎年発行される住民票がなければ罰金になる。
そのため、この世界に来て俺が初めて行った金銭の受け渡しは、罰金の支払いになった。
ちなみに、この世界ではアーグというのが、世界共通の通貨らしい。
タッチパネルによると1アーグ、1円と考えていいそうだ。
1000アーグの罰金と言われた瞬間、1文無しの俺は結構焦ったが、一緒に来ていたハルマハラさんが、出世払いでいいですよ。と言いながら1枚の紙幣をくれた。
早くも借金生活の始まりだよ!
ちなみに1アーグの値段を知ったのは、1000アーグと言われた後だったため、最初は、1アーグ、1ドルくらいの値だと思っていた。
100000円は高すぎるでしょ、と門衛の人に詰め寄ったのは、シルヴィには内緒にしてほしい。
そんなこんなでこの町にやって来た訳だ。
「木骨造の家! 綺麗な川! 亜人が普通に歩く通り! これぞ異世界! ビバ異世界! ハレルヤ!!」
「楽しそうですねユウマ君。初めての森の外は如何ですか?」
「さいっっこうですね! 本物の獣耳と尻尾がついた人間なんて初めて見ましたよ! ……それにしても、老人ばかりの村と違ってこっちは若者が多いですね!」
「それはそうでしょう。この港町カルアヴェルクは、比較的王都に近い町ですからね。こういう町に子どもたちが連れていかれるのです」
「……じゃあ、ダイキ君とカルアナちゃんの二人もこの町にいるんですか?」
その二人は、先日連れていかれた7歳になった子達だ。何も知らなかった俺は、別れの言葉すら言えなかったから、出来ることなら、もう一度会ってみたかったのだ。
「……それはどうでしょうか。私も詳しいという訳ではありませんので、あの子たちが今どこにいるかまではわかりません」
「……そうですよね。すいません、変なことを聞いてしまって……」
「別に構いませんよ。では早速、冒険者ギルドへ向かうとしますか」
そう言ったハルマハラさんの後を、俺はついていった。




