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「い~や~じゃ~!! 妾はユウマで遊ぶのじゃ~!! あんな面倒なことしとうない!!」
甲高い声が部屋全体に響きわたる。その声を発した幼き見た目の少女は黒髪の青年の腰に捕まりながらもう一人の青年に両足を引っ張られていた。
「いい加減にしろ! ……おいユウマ……お前の口からもなんか言ってやってくれよ……」
少女の足を掴んでいる青年が怒声を発するが、少女が手を放す様子は見られない。仕方ないため、青年は少女に腰を掴まれている黒髪の青年に助けを求めるが、彼は疲れたような表情であからさまなため息を吐いた。
「……いやもう……帰れよ、お前ら……」
『神々の余興』の予選を明日に控えた今日は1月1日、要するに元日であった。
神々にも目上の神やお世話になった神に挨拶をする風習があるらしく、特に創世神の3柱はこの日がとても忙しいのだそうだ。
時間を止めて逃げてきたエパルがここで数分間愚痴った後、やつれた顔のパルシアスが連れ戻しにきたのは数分前の話。そして、二人はなぜかここで言い争いをし始め、最終的にこうなった。
「僕だって本当はだるいけど、やるしかないんじゃないか!」
「じゃあパルシアスだけでやればよいではないか! 妾は100年前までこの日は放置されておったではないか!」
「うるさい、うるさい!! ナンバー2も参加するのがうちのしきたりだろうが! 今更駄々こねてんじゃねぇ! っていうかユウマを離せ!!」
「嫌じゃ、嫌じゃ!! 妾はユウマとまだ遊ぶのじゃ!! のう、ユウマ!!」
「いや、正直言って俺はエパルとだけは遊びたくない。お前と遊ぶの心臓に悪すぎる。……俺は忘れないからな、お前が疲れている俺の前でいきなり現れて脅かしてきたのを……まじで心臓止まるかと思ったわ……つぅか、時が止まったわ……」
目の前で時間が止まったままのシェスカを見ながらそんなことを愚痴るが、二人は全然話を聞いていなかった。
神々の挨拶では、なぜか天使ではなく眷族が付き添うものとなっている。
実際俺も、彼女達がやってくるまで大地の女神様の元に挨拶しに行っていた。
眷族達から品定めされているような視線をくぐり抜け、ようやく大地の女神様の元へ行けば、大地の女神様は俺と女神様を歓迎してくれた。……ただ、ハナさんに会うことは出来なかった。
理由は話してもらえなかったが、心配する必要は無いんだそうだ。
彼女の主神にそう言われては俺が踏みいることはできない。むしろ会っちゃいけない理由があると考えた方が自然だ。残念だが、ハナさんに会うのは諦めることにした。




