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40-5


「僕ね。お兄さんとシェスカとお別れして泣いてたらね……怖いおじさんに船の上で襲われたんだ。……無理矢理連れてかれてね……いっぱいの人と一緒に牢屋に入れられてたんだ……」

 ファルナが語り始めた話は、ファルナと初めて会ったあの町でのことだとすぐにわかった。

 あの日、奴隷商人から命からがら逃げてきたファルナはパルテマス帝国を一人でさ迷っており、男二人に襲われているところを俺とシェスカが見つけた。そして、ファルナは翌日俺が調べた船に乗って遠く離れた故郷に帰る手筈になっていた。

 しかし、彼女は再び奴隷商人に捕まってしまった。

「暗くて……怖くて……周りが泣いている声を聞いて……どんどん不安になって……でも、そんな時に、ホムラお姉さんが助けてくれたんだ!」

 覚えてる。俺がシルヴィを助けにいったあの場所に、ファルナは捕まっていたのだそうだ。偶然にも入れ違いでホムラ達『救世の使徒』がベラキファスの屋敷を襲撃。瀕死のベラキファスが閉じ込めていた獣人の少女達……。ホムラ達はそんな少女達をベラキファスの手から逃がしたそうだ。

「怯える僕に、助けにきたよって言ってくれて……でも、あの頃は人間が怖かったから……近付く人達全員傷つけてた……。それなのに、お姉さんだけは毎日僕に会いにきてくれてたの……」

「…………そっか……」

「うん。あの時は、今と違って人間の言葉難しかったから、何を言ってるのかさっぱりだったけど……それでも、僕が長い間暴走しないで済んだのはホムラお姉さんのお陰なんだ。……だからお願い! 僕にもホムラお姉さんを助けるお手伝いをさせて!! ……怖くて震えていた僕に手を差し伸べてくれた優しいお姉さんに……ありがとうって……ちゃんと言いたいんだ……」


 ファルナは俺の服を掴み顔を俺の胸に押し付けながら、そうお願いしてきた。その声は震え、彼女の思いが伝わってくる。

 本当は子どもだから駄目だとか、色々言える筈だ。だが、子どもだからといって、やりたいことを否定するのは、俺だってしたくない。なによりも、俺がファルナと同じ立場なら、絶対に譲らないだろう。

「……ドルチェ、今回の戦いにおいて、君の力が必要不可欠であることは間違いない。だが、危険な状況で無理に戦う必要はない。安全第一……無理な戦いだけは絶対にしないでくれ。……ファルナもそれを守ってくれるというなら、俺も君の思いに応えよう」

「!? する! 絶対する!! ありがとう、お兄さん!!」

 俺が彼女に向かってそう言うと、涙目の少女は腕で目元を拭い、こっちを正面から見始め、そう約束してくれた。


 その後、ファルナ、ドルチェの二人が代表メンバーという決定が女神様の口から正式になされ、それを覆そうとする反対意見が出なかったことにより、俺達の『神々の余興』参加が決まった。


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