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俺の膝に座ったファルナが、満足気な顔をしているのは雰囲気でなんとなくわかった。正直なところ、大事な話をしている最中くらいおとなしくしてもらいたいところだ。だが、無理矢理言うことを聞かせる為に怒声を発するのはあまり好きなやり方じゃない。例え相手が子どもであっても、伝える為の努力を怠らなければ大抵は話を聞いてくれる。
「ねぇファルナ、お兄ちゃんは今、大事なお話をしているんだ。悪いんだけど席でおとなしく待っててくれないかな? 終わったらいっぱい遊んであげるからさ……」
俺は懇切丁寧に機嫌を損ねないよう声を柔らかくして、ファルナに語りかけた。すると、意志が伝わったのか彼女はこちらに顔を向けてきた。そして、俺に予想外な言葉を伝えた。
「僕もお兄さんの手伝い頑張る!」
その言葉が俺に与えた衝撃は大きかった。
話の流れや、彼女の「も」という言葉が意味するところは一つしかない。
ファルナはこう言いたいのだ。
『自分も俺と一緒に戦う』と。
すぐに女神様の方へ向けば、彼女は俺の視線に首を横に振って答える。
女神様が強制させた訳ではない?
なら、何故彼女が出ると発言するのだろうか?
ファルナは二度の戦いにおいて瀕死の重症を負っている。
どちらも、シェスカを守って負った傷であり、その痛みは簡単に忘れられるものではない筈だ。
本戦で戦えば多かれ少なかれ傷を負う。いくら治療特化の万里華がいるとはいえ、怪我をすれば痛みを伴うのは間違いない。……だからこそ、眷族との戦いをこの中で俺の次に経験しているファルナだけは、この戦いがどれほど危険なものなのかわかっているもんだと思っていた。
……だが、理由が無い訳ではないのだろう。
俺が戦いを望んでいる。だからこそ、彼女はドルチェ同様手を貸してくれると言ってくれたのだろう。
「ファルナ……気持ちは嬉しいんだけど……俺の為に無茶はしてほしくないんだ」
「違うよ?」
「…………え?」
「僕もね。お兄さんと一緒なの。ホムラお姉さんを助けたい! だから、お兄さんのお手伝いするの!」
その言葉に、俺は驚きが隠せないでいた。




