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「おはよう、ユリスティナ」
ファルナを見送った俺はユリスティナの方に向かってからかい気味にそう言った。すると彼女の顔がリンゴのように赤くなっていく。
「申し訳ありません……マリカお姉様にシェスカちゃん達のことを見ておくように言われましたのに……」
「まぁ……子ども達に何かあったら危険だし、こういうことは無いよう次からは気をつけてね。疲れていた……なんてのは何の言い訳にもならないからね」
あんまり怒るとか注意するっていうのは苦手だ。
相手のしょげた顔を見るのが心苦しくなるし、関係が悪化したらどうしようって不安になる……でも、言わなきゃいけない時に言わず、それで取り返しのつかないことになる方がもっと嫌だ。
子どもが遊具から落ちたり、つこけたりするといった緊急時に対応するための保育士は必要だ。まず第一に緊急時の対応が要される際の迅速な対応、そして他の保育士への状況説明。それらは直接近くに居なくては出来ないことだ。
なにせ、子ども達だけじゃそれらは出来ないからだ。
(まぁ、保育士でもなんでもないユリスティナにそんなことを言うのは酷ってものだろうし……次から気をつけてもらう程度で今回はいいだろう)
女神様から目だけで急かされ、俺はユリスティナに「シェスカ達をよろしくね」と伝えて室内に入った。
室内も以前見たものとほとんど変わらないものとなっていた。……いや、正確にはところどころ女神様の趣味が出ていた。
絵本があったであろう場所には異世界物の漫画が置いてあったり、ホワイトボードには連絡用のプリントではなく、ポスターが貼ってあった。
「……自室に置けよ……」
子どもを司る女神に案内されるがままに移動している優真は先程の物を思いだし、そう伝えたが、女神は驚きと呆れの両方が感じられる表情を見せてきた。
「おいおい、もはや内心にとどめようともしなくなったね」
「どっちにしたって心読まれるのなら一緒だろ?」
「はぁ……それでも出来るだけ隠しなよ……私は別に気にしないからいいけど……今日の優真君、時空神様にも失礼な態度だったよ」
「……ですよねぇ……」
その言葉を聞いた瞬間、子どもを司る女神は歩く足を止めた。
「優真君……これからは神に対しての態度をミハエラに教えてもらっといてね。順位や格というのは君が思っているより重要なんだよ!」
そんな話をしていると、優真達はエレベーターのような物の前に着いた。




