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そこは、かなり巨大な建物だった。
下級神と呼ばれる神達が住んでいる区画の中で一際目立つその建物は、天井が高く、敷地が異様に広い。さすがに時空神ほどでは無いにしても、かなり大規模なものであろうことが容易に想像できた。
「……100年目の神様がこんな立派な建物を貰えるもんなの?」
「そんなもん周りを見れば一目瞭然じゃん」
そう言われたことで、俺は横目で周りの建物を確認した。何度見たって一軒家のような建物でこことは全く違うことがわかる。
「……前々から気になってたんだけど……女神様って一体何者なの?」
「面白いことを聞いてくるねぇ。私は子どもを司る女神以外の何者でもないよ」
「いやまぁ……それは知ってるけど…………まぁいいか。親しい間柄でも知られたくないことはあるだろうし……」
「そうしてくれると助かるよ」
そんなことを言い始めた彼女に、俺は内心で溜め息を吐きながら、建物の中に入った。
中に入った瞬間、俺は驚き過ぎて歩く足を止めてしまった。
何故なら、高層ビルの建物からは想像出来ないような光景が目の前に広がっていたからだ。
「本当に……あんたには驚かされてばっかりだよ」
「気に入ってくれたかい?」
「ああ」
そう言いながら、俺は敷いてあった芝生を歩き始めた。
そこは、俺が幼い頃に通った保育園とほとんど同じ外見をした施設だった。
空には少しだけ眩しい太陽、懐かしい遊具が置いてある園庭、そして、幼き時間を過ごした保育施設。
最後に訪れてまだ一年も経っていない筈なのに、なんだか懐かしく感じてしまう。
そして、園庭には見覚えのある顔がいくつかあった。
「お兄ちゃん、お帰りなさい!!」
滑り台から滑り終えたばかりのシェスカが、こちらに駆け寄ってくる姿を見て、俺はしゃがんで女神様を下ろした。
そして、こちらに駆け寄ってくるシェスカを抱え上げた。
「お兄ちゃん、お話終わったの?」
「まぁね。それより滑り台で遊んでたのか?」
「うん! 天使のお姉ちゃんが遊んでいいって! それでね、それでね! お姉ちゃん達といっぱい遊んでたの!」
シェスカが指差す方向には、滑り台を滑っているドルチェの姿と木陰で寝ているスーチェの姿があった。
「そっか~。良かったね、いっぱい遊べて」
「うん!!」
満面の笑顔で俺に対して頷いたシェスカは、それだけ言うとまだ遊び足りないのか再び滑り台の方に駆けていった。




