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「ハナちゃん、貴女にはまだ話があります」
そう言われては、ハナにその話を聞かないという選択肢はなく、浮かしていた腰をソファーに戻した。
「な……なんでしょうか?」
「貴女は今回どうなさるおつもりなのか聞こうと思いましてね」
「どうするも何も……私は全力で頑張ります!」
「それであの眷族と戦うことになっても……ですか?」
「……っ!?」
目を瞑った状態の時空神にそう聞かれた瞬間、まるで全てを見透かされてるのではないか、という錯覚に陥った。
「あの眷族にとって今回の優勝は、共に戦い、自分の弱さが原因で亡くなってしまった人間の子どもを生き返らせる絶好の機会。その為に、麒麟の修行にも強靭な精神力で耐えてみせた。あの子が道中でどうなるかにせよ……敵として相対するというのであれば……相応の覚悟はしておきなさい」
それだけ言うと、時空神は呆然としているハナの前を横切って部屋から退室した。
その後に続くエパルという幼き見た目の少女は、無関心といった風に時空神の後に続いて部屋から退室した。
そして、最後に残されたのは、項垂れたハナと、それを見て自分の髪をかきむしったパルシアス、そして大地の女神だけだった。
パルシアスはそんな状態のハナが見ていられなくて助言をしようと手を伸ばした瞬間、彼女の隣にいる存在から発された神威にすごまされた。
その神威を感じ取れたのは向けられたパルシアスのみ。そして、それの意味がわからないパルシアスではなかった。
そして、前の二人同様、部屋から退室しようと出入口に向かった瞬間、「ねぇ、パル君」とハナに呼び止められてしまった。
「……なんだよ……」
「私はどうしたらいいと思う?」
せっかく地雷を回避しようと思っていたのに、誘導されてしまったパルシアスはその問いになんて答えればいいのか迷った。
下手な回答をすれば半殺しにされかねない状況……だが、彼はハナを見た瞬間、伝えるべき答えが見つかった。
「自分の思うがままに動けばいいよ。それで後悔するなら、それはしなくていい後悔だ。悩んで考えて……それで導きだした答えなら胸を張って行えばいい。君自身の道を君以外の誰かに決めさせるな」
それだけ言うと、パルシアスは身を翻して部屋を去っていった。




