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「もう……さすがに……無理……」
大の字で倒れている優真は息切れしながらそんなことを言い始めた。
そんな優真の元にパルシアスが近付いてくる。
「この程度で倒れているようじゃ、まだまだ僕には到底及ばないよ……ほら」
息切れしながら手を差し伸べてくるパルシアスの右手を掴み、優真は立ち上がった。
「次は負けない……」
少し悔しくて素っ気なく言ってしまう優真だったが、パルシアスは嬉しそうな笑顔を見せてこんなことを言い始めた。
「なら、本番を楽しみにしてるね」
「……本番?」
「はい。貴方には『神々の余興』に参加していただきます」
パルシアスの言葉の意味するところがわからない優真の疑問に答えたのは時空神だった。彼女は、パルシアスと優真が立っている場所まで優雅に近付いてくる。
「『神々の余興』って前に女神様が教えてくれた催しですよね? なんか眷族を使って戦う大会だって説明を受けたんですけど……その大会に出ろとおっしゃるのですか?」
「はい」
一切の躊躇もなく、時空神は頷く。
正直、優真としてはそんな大会に出る気はなかった。何故なら、彼にはそんな大会に出るよりも優先すべき事があったからだ。しかし、そんな優真の心を見透かすように彼女は続けた。
「それが貴方にとって、唯一望みを叶える道ですから」
「!? 詳しく……お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
勢いのまま発しようとした言葉を優真は直前で止めた。
今更ではあっただろうが、相手の地位は自分を簡単に亡き者に出来る地位だ。そんな相手に頼み事をするのであれば、言葉遣いは慎重にならねばならない。でなければ、相手の心証を悪くし、教えてもらえないという事態になるかもしれないからだ。
ぼろぼろになって頭が冷えた。いくらなんでもさっきまでの態度は目上の人に接する態度ではなかった。
(うちの女神様も知ってそうだからってのもあったけど、頭に血が上ると細かいところに気配りできなくなるの……本当に直した方がいいな……)
内容を教えてもらえるか不安の優真を見て、時空神は小さく笑った。
「別にそんな畏まらなくても教えて差し上げますよ。だって貴方……期待以上の成長を見せてくださったではありませんか」
そう言った時空神は、指を鳴らした。




