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「時空神様がどんなお方なのか……それを俺は知らないし、神様の中でどんな取り決めがあるかもわからない。でも、これは知ってる。神同士は私的な争い事を禁ずる。以前、霧の女神の眷族筆頭が襲ってきた後に聞いた事実だ。それなのに、時空神様の眷族は俺達のいる城を襲ってきた。理由を聞かせてもらえませんか?」
「ユウマ! さすがに失礼すぎる!! 女神様が穏便な内にーー」
「よろしいのです」
時空神の方に足を前へ進める優真の前に時空神の隣に控えていたパルシアスが割って入る。しかし、彼の肩に手を置いて彼の言葉を遮ったのは、玉座から立った時空神だった。
「今回は事が事ですし、無礼なのも仕方ないでしょう」
彼女の目を見た瞬間、パルシアスにはわかった。この展開が彼女に見えていた光景で、彼女がそれをあえて選択したことを。
「そうですか。なら遠慮なく……」
優真がそう言うと、パルシアスは諦めるように下がった。
「時空神様であればパルシアスの予知みたいに未来を先読みすることが出来るんじゃないですか? あんな事態に発展する前に、全てを終わらせることが出来たんじゃないですか?」
「そうですね。しかし、時を見れるとはいっても、何のあてもなく未来が全て見えるとお思いで?」
「!?」
「確かに、あの者の時を見ていれば、私達も動けたでしょう。しかし、人間一人でも無数の分岐点がある未来という不明瞭なものを全て見通せ。そんなことは時間を司る私でも不可能です。いつ起こるかわかるのであればともかく、1日の未来を全て見るのだって難しいというのに、貴方はそんなことを私に望むのですか?」
彼女の言葉は、少し考えれば思い至る事実だった。その事実を考えもしなかった自分の浅はかさに優真は歯噛みした。
「……そう……ですね。考えが足りませんでした。しかし、それで時空神様を許すことなんて出来ません。なんなら貴女がその眷族に指示を出したって可能性もなくは無いんですから……」
「それはないよ、ユウマ」
「はぁ? お前が知らされてないだけで本当はーー」
「無いよ。何故なら彼は他の神の眷族になったんだから」
パルシアスの言葉に、優真自身は意味を理解出来なかったが、時空神以外の二神は衝撃を受けたような顔になった。




