7-3
その言葉が優真に衝撃をもたらしたことは言うまでもないだろう。
今まで、隣で保育所を共に手伝っていた人が、あの女神の信仰者だったのだから。予想外の真実が、優真の頭をかきみだす。
しかし、それで納得できることも多くあった。
行き倒れしていた自分を、彼女が見つけてくれたことも、ミストヘルトータスの咆哮を、女神の加護を受けていないと思っていた彼女が無傷だったことも、信仰者だと言うならいろいろと納得できた。
(……あれっ? もしかして俺って、信仰者の前で信仰している神の悪口言ってたんじゃ……)
一難去ってまた一難、信仰対象って存在は、人によっては生き甲斐と言うことだってある。
知らなかったこととはいえ、とんでもないことしてたんじゃ。…………いやでも、もしかしたら、神託を受けるためだけに信仰者になった可能性もーー
「彼女は、5年前に両親を亡くした影響で、母親の信仰対象だった子どもを司る女神に心酔しています」
(終わったーー!! 心酔してるとかなら、絶対怒ってるじゃん! どうすんの! 俺はこれから保育所行ってシルヴィと会うんだぞ!)
「……顔が青ざめてますけど、どうかしたのですか? ……まさか彼女の前で、女神の悪口を言ったとかじゃないですよね?」
図星をつかれた優真は、青ざめたままの状態でゆっくりと目を反らす。
その姿を見たマーカスさんが、あ~あ、とでも言いたげな目でこっちを見てくる。
お願い! そんな目でこっち見んで!
◆ ◆ ◆
(あ~~~今日だけは行きたくね~~~)
保育所を前にしながら、俺はそんなことを考えていた。
「どうした? 早く門を開けてくれないと昼食届けられないんだが」
後ろで大きな鍋を両手で持っているライアンさんが声をかけてくる。
あの後、マーカスさんとは、いろんなことを話した。暫く話していると、庭の柵越しにライアンさんが俺を見つけ出したことで、あの場はお開きとなった。
いろいろと魔法や信仰組織について、この村にいる信仰者に聞く予定だったのが……何故こんなことに?
俺だって、何も知らないやつが、女神の悪口を言ってきたらいい気はしない。
べ……別に、あいつを信仰している訳じゃないし!
確かに何度も何度も迷惑をかけられはしたけど、助けてくれたことだって何度もあるわけだし。あいつがくれた能力がなかったら、今頃俺はこの場にいなかっただろうし。そういうところは感謝してる。
まぁ、要するにシルヴィが怒る理由もわからなくはない。嫌われていたって仕方ない。これは完全に俺が悪いのだから。




