39-7
一本道になっている通路をしばらく歩いていると、扉を見つけた。
その両脇には天使がいる。
「「ユウマ様、ハナ様、中へどうぞ」」
二人の天使が声を揃えて言うのと同時に扉が勝手に開き始め、俺達は部屋の中に入った。
部屋に入ろうとすると、ハナさんは俺の手を離してきた。
「こっからは女神様の筆頭としてやらなきゃだから、ごめんね」
残念そうに謝ってくる彼女に、俺は首を振って気にしていないことを伝える。
部屋は結構広い空間になっていた。方向感覚がおかしくなってしまいそうな一面真っ白な空間で自分の感覚が狂いそうになりながら、俺は自分の座る場所を探した。
「優真君は私の隣だよ」
お得意の心を盗み見する能力を使用したのか、うちの女神様は自分の右隣を叩き始めた。
その指示に従い、俺はとりあえずそこに座った。すると彼女は「いちゃいちゃするなら家でやれ」と額に筋を浮かべながら俺に耳打ちしてきた。
場をわきまえろという彼女からの文句に小声で謝ってから、俺は正座の体勢になった。
しかし、しばらく待っても時空神様は現れなかった。
約束の時間を数分過ぎても、時空神様が現れることはなかった。時間にシビアな方だと聞いていたので、俺は内心驚いていた。
保育士になるために正座の練習をしていたこともあり、別に苦でも無いが、俺自身が時間にルーズな奴を許せる方では無いため、ちょっとだけ苛立っていた。
現在の位置関係は、西側に大地の女神様とハナさんが正座しており、南側に俺と女神様……そして、白い髪の少女が正座していた。
見た目はシェスカと同じくらいだが、見た目で判断してはいけないだろう。なんたって、うちの女神様だって見た目だけは幼い少女なのだから。
ちなみにこの子は時空神様が現れる予定の1分前からずっと俺の隣に座っている。パルシアスにどんな方か聞こうとしたが、彼も姿を見せてはいない。
そして、何か言いたいことがあるのか、先程からずっとこちらをじーっと見ている。目をそらすこともなく、まばたきをすることもなく、ただただこっちを見続けている。
もはや恐怖すら感じかねないレベルのガン見だ。
「のうお主……お主は妾が見えておるのか?」
そう聞かれた瞬間、俺の意識から恐怖が消えて疑問符が浮かんだ。
「え? いやまぁ見えてるも何も無いよね? 実際そこに居るんだし」
俺がそう返すと、少女はいきなりニヤニヤし始め、何かをぶつぶつと呟き始めた。




