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テンションの高いドルチェ、ファルナ、シェスカの3人がはぐれないように注意しながら、代わり映えのしない景色を見ながら歩いていると、周りよりも一際大きな建物が見えた。
(……高過ぎだろ……階層は軽く100を越えているんじゃね?)
上を見上げながらそう考えてしまう程、そこは大きかった。
「ようこそ、我らの本拠へ。ユウマ、時空神様はここで君をお待ちになられている。心の広い方だが、くれぐれも粗相の無いように頼むよ」
こちらを向いて深々とお辞儀をしたパルシアスが頭を上げてそう言ってきたが、俺には不安要素しか無かった。
「……はは……頑張ってみるよ」
俺も礼儀作法に自信がある方では無いが、問題は俺よりもシェスカ達だろう。難しい作法をしろなんて無茶ぶりをする気はないが、静かにすることも難しいだろうな。
イアロや、最近やたらと聞き分けがいいファルナは多分大丈夫だろうが、問題は残りの3人。スーチェに関しては静かにしているだろうが、十中八九寝る。むしろ絶対と断言してもいいくらいの確率で寝る。
シェスカとドルチェに関しては寝ないにしても、途中で飽きて遊び始める気しかしない。
はぁ……不安しか無いな。
心の中で溜め息を吐きながら、俺は皆を連れてパルシアスの後に続いて、時空神様の本拠に入った。
中は広々とした空間になっており、洋画で見たような高級ホテルのロビー風だった。だからと言って、ホテルウーマンがいる訳でもドアマンがいる訳でもない。いるのは、以前ミハエラさんが身に着けていたような白い服を着た天使だけ。そして、その全員が緊張した面持ちをしている。
最初はその雰囲気に疑問を抱いたが、ロビー内を見渡したらすぐに理由がわかった。
「お~い、優真君! 結構遅かったね~」
「女神様!?」
向き合ったソファーで寛いでいたのは、主神の子どもを司る女神様とハナさんの主神こと大地の女神様だった。
手招きしてくる主神の元に向かった俺は、笑顔を向けてくる彼女に疑問をぶつけることにした。
「なんでこんなところに?」
「簡単な話さ。優真君と共に挨拶しに来たんだ。年明けにもなれば創世神の一柱でもあらせられる時空神様は忙しくなる。優真君がいつまでに強くなれるかわからなかったから年明けまでにという時間制限ギリギリの日を指定したんだけど……優真君は想像以上に早く強くなったからね。時空神様も会ってくださると言ってくれたんだ」
「そうだったのか……」
「うん。……まぁ、眷族が増えたりするなんて完全に予想外だったんだけどね。でも、優真君にとっては頼もしい味方になってくれることだろう」
「なんの話だ?」
「ふふっ、なんでもないよ。そんなことより、優真君とハナちゃん以外の他の皆はこっちのミハエラの指示に従って私の拠点に行っててくれ。天使マリカもミハエラのサポートをよろしく頼むよ」
「は……はい!」
いつの間にか女神様の隣に立っていたミハエラさんが俺達に無言で深々とお辞儀をし、万里華も緊張した様子のまま、女神様に返事を返した。
「じゃあ優真……また後でね」
「ああ……また後で」
小さく手を振ってきた万里華に手を振り返しながら、俺がそう答えると、こちらも出発する雰囲気になった。
こうして俺は、子どもを司る女神様、ハナさん、大地の女神様、パルシアスと共に時空神様の元に向かった。




