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ハナの【大地渡り】という名の特殊能力によって移動した優真達は、とある場所に連れてこられていた。
「いやいやこれは……いくらなんでも予想外すぎるだろ……」
そうぼやいた優真の視線の先には、かつて見たことのあるような光景が広がっていた。
数えきれない程の高層ビルが白い空間に建ち並び、地面には道路や交差点が広がっている。
日本の都会によく似た光景だが、日本とは明らかに違うものがあった。それは、店や駅などの建物が一切見当たらないところだろう。
道路や交差点はあるのに、車や電車といった乗り物も見当たらない。だが、それもおかしい話では無いのだろう。
ここは『ゴッドシティ』と呼ばれる神々の暮らす世界。眷族以下の者からは神々の都とも言われており、その名の通り、多くの神々がここで暮らしている。
神、眷族、天使のみが足を踏み入れることが許された神の町。
食事をしなくても死ぬことはなく、息をせずとも生きられる。乗り物に乗るくらいなら走った方が速いと満場一致で答えるような人間を超越した存在のみがいる町。
そこが優真達のいる場所だった。
高層の建物がひしめく光景に目を奪われ、唖然としているメンバーを率いながら、優真はとある場所を目指していた。そんな優真の頭がペチペチと叩かれる。
「ねぇねぇお兄ちゃん! あれな~に!」
「ん? あぁ……あれは信号機だな。皆が安全に道路を使えるようにするための道具だよ」
「じゃあじゃああれは!!」
「あれはガードレールだね……あれも皆が安全に道路を使えるようにするための道具だよ」
テンションの高いシェスカがいろんな所を指差して、その度に日本の知識を元に答えていると一番前を歩いていた青年が優真の方に振り返って笑顔を見せた。
「いや~ごめんね~、ユウマ。女神様が急に予定を繰り上げちゃって~」
パルシアスはそんなことを言ってくるが、彼の態度からは悪いという意思を感じられない。そんな態度に優真は溜め息を吐いた。
「ホムラを生き返らせるためだからな……予定が早まるならこちらとしては好都合だ」
「そう言ってくれるとこっちとしても助かるよ」
再び笑顔を見せるパルシアスを、優真は真剣な眼差しで見た。その目からは、微かだが怒りも含まれていた。
「……信じていいんだよな? お前は俺の敵じゃないって……」
「もちろん。僕はユウマの味方だ。君が困っている時はいつだって力を貸すよ」
そう言いながらも、一切の隙を見せないパルシアスに、優真は再び大きな溜め息を吐いた。




