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「な……何すんのよ!」
涙目になりながら、子どもらしい怒った顔を見せたドルチェに優真は笑いかけた。
「涙っぽいドルチェなんて、やっぱりドルチェらしくないよ」
いきなりそんなことを言われて、戸惑いを見せるドルチェに、優真は真剣な表情になり、続けた。
「俺はドルチェ達を任せられて良かったと思ってる。君達がいたから、自分が成長出来たんだと思ってるし、なかなか言うことを聞いてくれないところに、むかついたりした時もあったけど……それでも、やっぱり楽しかった」
そう話しながら、優真はドルチェの頭に手を置き、そっと撫で始めた。
「君達が笑顔を見せてくれる。それだけで、もうちょっとだけ頑張ろうって思えた。修行で疲れた俺に癒しをくれる。寂しかった俺に元気をくれる。そんな君達の笑顔が俺は好きなんだ。麒麟様と離ればなれになって、辛い気持ちや、悲しい気持ちがあるのはわかってる。泣くのを止めろなんて酷なことは言わない。子どもは泣くのが仕事だ。それを許容しての俺達だ。泣くのを我慢している子どもを見捨てるなんて、俺の信念に反する。
だから、君達はただ、自分のやりたいようにすればいい。どうしたいかは自分で決めなさい」
「でも……でもっ!」
「どうしたい? ドルチェは俺達と一緒に暮らしたくない? それとも、一人で生きていく?」
「……本当に? 本当に我が儘言っていいの?」
「今まで、散々我が儘言ってきたくせに、今更何言ってんの。子どもの我が儘の一つや二つ、許容出来ないで子どもを司る女神様の眷族筆頭が務まるかよ」
優真がそう言うと、涙を目からこぼし始めたドルチェは言いづらそうに口を開いた。
「お願い……します。あたちも……おじちゃんと一緒に……暮らさせてください」
「もちろん! 3人とも歓迎するよ!」
◆ ◆ ◆
話を終え、万里華達の方を見ると、そこに万里華の姿は無かった。
「がわいぞうに……これからはお姉ちゃんのことを本当の家族だと思っていいからねぇ~」
声がした方へ目を向けると、万里華がドルチェ達に号泣しながら抱きついていた。唐突な行動に、ドルチェ達3人が困惑しているのが伝わってくる。
シルヴィとユリスティナの二人もハンカチを握って目に当てている。
「ユーマさん、私は構いません。むしろ大歓迎です!」
「わたくしも同意見です。妹が増えたみたいで嬉しいですし、なにより、ユウマ様がそう決めたのでしたら、わたくしに反対する意思などありませんわ!」
「そうか……そう言ってくれると助かるよ」
すんなり受け入れてくれたシルヴィとユリスティナの二人に感謝の言葉を伝えていると、いきなりハナさんが俺の隣に座ってきた。
「安心していいよ、ユウタン。大地の女神様も私と同じ考えみたい。ここなら、皆一緒に暮らせるし、ユウタンさえ良ければだけど、いつまでも使ってくれていいからね」
「ありがとう、ハナさん」
感謝の言葉を伝えると、彼女はこちらに笑みを見せてきた。
こうして、子どもを司る女神様の眷族に新しく3人の眷族が加わった。




