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シルヴィが階段を降りていくと2階から1階への道中で、玄関の方が騒がしくなるのを感じ取った。
直後に聞こえる話し声はこの1ヶ月待ち続けた相手の声に間違いないとわかると、自分の全身が喜びで満ちていく。
そして、玄関まで着けば、挨拶をしている天使達の先に、黒髪の青年が立っていた。
彼の周りには、先程まで落ち込んでいたにもかかわらず、満面の笑みを見せる万里華と頭を撫でられ嬉しそうにしているユリスティナの姿があった。
そして、黒髪の青年は足音が聞こえたことで、その視線を万里華からその足音の方向に移した。そこで二人は目があい、黒髪の青年は優しく微笑みかける。
「ただいま、シルヴィ」
そう言われたことで、シルヴィは心の奥底から沸き上がってきた気持ちに従い、優真に抱きついた。
「おかえりなさい、ユーマさん」
目を見開いた優真は少しだけよろめくが、しっかりと彼女を受け止めた。
◆ ◆ ◆
「……さて、帰ってきたばっかりの優真には悪いんだけど……どうしても聞きたいことがあるんだよね」
玄関から移動した優真達は旅館の宴会場によく似た食事をする大部屋にいた。
それぞれ座布団に座りながら、全員が向かい合う。
そんな中、優真にそう聞いたのは、万里華だった。
「……だろうな……」
万里華の言葉にまるでわかっていたかのように苦笑いを浮かべながらそう答える優真は、その視線をある箇所に向けた。
「ねぇねぇお姉さん……お姉さんはなんでおはね生えてるの?」
「これ? これはね、朱雀族の証なんです」
「……すざく?」
「朱雀っていうのはですね……」
「そんな話どうだっていいからさ! ねぇシェスカちゃん、あたちと遊ばない?」
「ちょっ! どうだってよくないですよ! これはボクにとって大事なものなんです!」
「うるさい……眠れない……」
「しー! お兄さん達がお話してるんだから皆静かにしないと怒られるよ!」
優真が視線を向けた場所には5人の子どもがおり、少し離れたところで何かを話している様子だった。
「……単刀直入に聞くね。……なんであの子達がこんなところにいるのよ!!」
万里華の至極ごもっともな質問に、優真も訳がわからないまま、今日の出来事を話すことにした。




