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37-9


 神とはそれぞれを司る最高の存在だと、昔ミハエラさんに教えられたことがある。だからこそ、この世界には神と呼ばれる者が数多く存在する。

 例えば、俺の神様は子どもを司り、大地の女神様は大地を司る神様だ。そして、隣で一緒に風呂に入っているこの見た目が老人の神様は、全ての獣人と方角を司る神様なんだそうだ。

 神獣族と呼ばれる青龍、玄武、朱雀、白虎というそれぞれの一族を筆頭に南の方にある大陸に住んでいる獣人達を統べている。

 だからこそ、俺はどうしても彼に聞きたかった。

 "なぜ、ファルナを見捨てたのか?"

 それは俺が唯一彼に物申したいことだった。

 余計なお世話かもしれない。彼らにしかわからない事情があるのかもしれない。

 でも、俺は知っている。ファルナはとても良い子だ。自分よりも年下のシェスカにお姉さんっぽく接しようとする姿なんか見ていてほのぼのする。好奇心が旺盛で、知らないことに興味を抱き、目を輝かせている姿はとても可愛らしい。だが、その好奇心が仇となり、彼女は1日で全てを失った。

 家族も住む場所も未来さえも、人間の欲によって奪われた少女、それがファルナだ。

 だが、この件において悪いのはファルナじゃない。

 彼女の無知を利用した人間だ。

 まだ10歳にもなっていなかったであろう当時のファルナに全ての責任を擦り付け、見捨てるというのは、果たして神がやることなのだろうか?

 まだ眷族では無いとはいえ、将来を約束されていた彼女にその仕打ちはむごすぎるんじゃないだろうか?

 だからこそ、俺は帰る前にこの爺さんから真相を聞かねばならない。


「ファルナのこと……任せてしまってすまんかったな……」

 聞くタイミングを伺っていた俺に、隣の爺さんがそんなことを哀愁漂う顔で言ってきた。その予想外な発言に俺は驚かされた。

「……はは……貴方も女神様と同じで俺の心を読めたりするんですか?」

「いや、わしに小僧の心は読めんよ。小僧はあの子の眷族じゃからな。ファルナも既に……わしじゃ何を考えとるのか読めん……」

 爺さんの目は俺の傍で楽しそうに犬かきをしているファルナに向いていた。

「……読めないんだったらなんで俺にそれを謝ったんです?」

 そう聞くと、爺さんの目はゆっくりと俺の顔に向けられた。

「そりゃあ、今日しか謝る機会が無いからじゃよ」


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