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37-8


「ったくさ~! いくら悔しいからってこんな時間までやんなくていいと思うんだけどな~!」

 上着を脱ぎながら先程の件を愚痴っている優真は、風呂に入浴するため、脱衣場にいた。周りには元気に駆け回っている4人の子どもがおり、赤髪の少年を除いた3人の少女は、当然裸だった。

「そんなに暴れ回るとつこけるぞ。すぐに行くから先に入っててくれ」

「「「「は~い!」」」」

 元気に返事をした4人の子ども達は引き戸を開けると、そのまま風呂場に突入していった。

 戸の奥から聞こえる元気な笑い声を聞いて、先程の件は既にどうでもよくなっていた。


「3人とは……明日でお別れ……なんだよな……」

 ここに着いてから1ヶ月半の間、あの子達とはほとんど一緒にいた。最初は不安も多かったが、1ヶ月前の試練がきっかけでファルナ以外の3人ともかなり仲良くなれた。

 その日以降は修行の時も手伝いを買って出てくれたし、あの子達のお陰で、俺のあの技も完成まで持っていけた。

 あの子達がいなければ俺はここまで強くなれていなかっただろう。

「……まぁでも、あの偏屈ドS爺から解放されるのだけはありがたいよなぁ~」

「誰が偏屈ドS爺……だって?」

「!!?」

 引き戸を開けると、畳んだタオルを頭に乗せて風呂に浸かる爺さんの姿が視界に映った。そして、爺さんがキレ気味でそう聞いてきた瞬間、俺は自分の心臓が止まるかと思った。

「な……なんで!! なんでこんなところにいるんすか!」

「わしがどこにいようとわしの勝手じゃろうが……」

 そう言われては何も言い返すことが出来ない。今まで一緒に風呂に入るという機会が無かったせいで驚いてしまったが、元々この小屋みたいな見た目の家は麒麟という目の前で寛いでいる神様の物だ。

 家の持ち主が敷地内で何をしていようと勝手だろう。

「そ……それにしても珍しいですよね? 今まで一緒に風呂どころか、ここに帰ってくることすら無かったですし……」

「わしがここに居ては、小僧に気を遣わせるのが目に見えていたからな……それじゃ小僧の本当の姿は見せてもらえんじゃろ?」

「本当の姿?」

「そうじゃなぁ……例えば、あのクソジジイだけはいつか絶対ぶっ殺す!! ……という言葉は計63回……現在トップじゃな……」

「…………」

 具体的な内容を突きつけられた瞬間、俺は反論の言葉すら思い浮かばなかった。

 俺は別にこの神様の眷族という訳じゃない。子どもを司る女神様(うちの女神様)と違って、この爺さんが創世神に伝えれば、俺は聖域で待っている彼女達より先に閻魔様と会うことになる。

(……やべ……冷や汗が止まらなくなってきた……)

 しかし、厳しい顔をしていた爺さんは急に温和な表情を見せ始めた。

「構わぬ。創世神(奴ら)には伝える気などもとから無い。それよりも早くこっちに来なさい。男同士、裸の付き合いでもしようではないか」

 そう言われて安堵した俺は、素直に爺さんの誘いに乗った。


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