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「……父であり……王族でもある私にこんなことをして……貴様ぁ……ただで済むと思っとるのか?」
「はぁ……相変わらずしぶといですね……」
壁に強く叩きつけられたにもかかわらず、這い上がってきた父の姿を見て、カルアーデはため息を吐いた。
「そうですね。貴方も一応王族なんですから、ちゃんと罪状は告げないといけませんね」
「罪状だぁ?」
「はい。罪人カルバチョフ……貴方には国家転覆の罪と神への反逆という決して許されない罪がある。公表すれば、他国との溝が更に深まり、優真様の目的と私達の目標に支障をきたします。よって、貴方にはこの場で審判を下します」
「ど……どこにそんな証拠が……」
そう聞かれたカルアーデは、動揺している様子のカルバチョフに軽蔑した眼差しを向けながら、懐から1本の鍵を取り出して彼に見せた。
それを見た瞬間、カルバチョフの顔が真っ青になった。
「これがなぜかこの通路に落ちてました。そして、映像には敵の男が鍵を使って開けた映像がくっきり映っていた。貴方も知っていますよね? この3本の鍵は持ち主が譲渡するか死ぬかしないと鍵穴を通らない仕掛けになっています。鍛冶の神様の眷族筆頭様が造った鍵は模造することも不可能……要するに、貴方が生きている時点で貴方の罪状は決定されているんですよ……」
カルアーデの体は震えており、怒りをこらえるので精一杯な様子だった。握った拳からは爪が食い込んでいるのか血が垂れ始めており、床に滴り落ちる。
「……なんであの方がいる時に襲わせたんですか?」
「……なんのことだかわからんな……」
「しらばっくれないでください!!!」
怒りが込められたその言葉に、知らぬ存ぜぬを通すつもりのカルバチョフに怯えが見えた。
「あの方達は関係なかったはずです! 狙いは私と陛下だけだったのでしょう? なら、あの日じゃなくても良かったはずです!! なんで子どもが意識不明の重体を負わなくちゃいけないんですか? なんで仲間を守ろうとしただけの少女が死ななくてはならないんですか? 前線に立ち、家族や友の為に戦った者達がなんで理不尽な刃を振るわれなきゃいけないんですか? なんで……なんで優真様が涙を流さなければならなかったんですか? ……私は何も出来なかった。……国や民の為につけたこの力も、何の役にも立たなかった。自分より幼い少女が死地に行くのを……私は止められなかった……」
カルアーデの目から涙が頬を伝って落ちる。
「……こんな私じゃ、女神様や優真様に顔向け出来ません……だからせめて、首謀者の貴方だけはこの手で討ち取らせていただきます!!」




