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「……チャームとマインドコントロールね~」
名前と能力の観点から、戦闘で使うのは難しそうだな。いや、どんな能力も使い方次第とか聞くし、案外いい魔法なのかもしれないな。
でも、やっぱり異世界に来たんだったら、火の魔法で辺り一帯燃やすような魔法使ったり、氷の魔法を冷蔵庫がわりに使ったりといろいろやってみたかったよな~。
暑いの嫌いだし、氷の魔法ぐらい使ってみたかった。
ちなみに、今はおそらく夏だと思う。こっちの世界でもそう言うのかは知らないが、昼間はなかなか蒸し暑いから、夏だと思っている。
「……ユウマ君は人が戦闘している最中に、その戦闘を見ずにいったい何をやっているのですかな?」
目の前に出てきた画面を操作していると、頭に筋を浮かべているハルマハラさんが、笑顔で問いかけてきた。
その笑顔が与えるのは恐怖だけだと思うが。
「……え~っと、自分にはどういう魔法が使えるのか、と調べていただけであります」
俺の前に展開しているこのタッチパネルは、どうやら他の人には見えない代物らしい。たまに人前でいじっていると、変な目で見られるため、普段は人のいない場所でやっているのだが、少し遠くにいると油断してしまった。
このタッチパネルは、天界に住んでいる女神や天使が交信のために使ってくることもあるが、基本的には、スキルのチェックやアイテムボックスの使用、情報の提供など様々な用途で用いる便利なものだ。
マナーモードとかに出来ないせいで、夜にも普通に起こしてくることを除けば、とても使い勝手のいいものだ。
ハルマハラさんは、俺の言い訳に対して興味深そうな顔になっている。よくアイテムボックスを使ってみせることもあるので、ハルマハラさんは半信半疑ながら、そのタッチパネルという存在を知っている。
「ほほう、それは実に興味深い。それで? ユウマ君も魔法が使えるのですかな?」
「チャームとマインドコントロールだって教えられました」
「……チャームに、マインドコントロールですか。……聞き覚えがありませんね。……確かユウマ君と面識のある神は、子どもを司る神様でしたな?」
「はい。……そういえば、そいつの話によると、この村に信仰者がいるから、ここに送ったと軟禁されてる時に聞きましたが、どなたかご存知ないですか?」
俺がそう尋ねると、ハルマハラさんは考え事をし始めた。
しかし、その背中を襲うモンスターはいなかった。
背中から放たれたオーラが、モンスターを萎縮させ、近寄ろうという考えすら持たせないのだ。
いやまぁ、俺もさすがにこのくらいのオーラじゃ問題なくなってるあたり、日に日におかしくなっているのを感じる。
「この村の人間はだいたいが大地の神を信仰していますし、ライアン殿や私のような元冒険者以外は期待できそうにありません。……ですが、村長なら何かご存知かと。一応村を取り仕切っている者ですからね」
「……あぁ、あの人ですか。確かにあの人なら何か知ってそうですね。近いうちに聞いてみようと思います。是非会ってみたいですから」
「それなら、明日の早朝練は休みにするので、午前中の間に行って来るといい」
「ありがとうございます。……それと、今日はいろいろとご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!」
「いえいえ、別にこのくらい構いませんよ。それでは帰りましょう。モンスターの後始末は任せましたよ。素材とかは、後々役に立つので、取っておくのが無難でしょう」
そう言われたため、俺はタッチパネルのアイテムボックス機能を発動させ、素材や肉を全回収という機能で回収した。




