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36-35


「それじゃあ私達は帰るけど……本当に優真は帰らないの?」

 色々と荷物が入った鞄を持ちながら、万里華は寂しそうにそう言った。

 彼女の後ろには、同じく寂しげな顔を優真の方に向ける少女が二人いた。

「ああ、俺も後1ヶ月ここで頑張ってからそっちに帰るよ」

 優真が悲しそうに微笑むと、優真のズボンが引っ張られた。優真はそちらの方に視線を向けると、そこには優真のズボンを握ったシェスカが抱っこを仕草だけでおねだりしていた。

 これから1ヶ月の間、会うことが出来ないとわかっていた優真はシェスカのおねだりに応えた。

「シェスカも元気でな。お姉ちゃん達の言うことをちゃんと聞くんだぞ」

「お兄ちゃんは帰んないの?」

 今にも泣きそうな顔を見せる少女の言葉に、なんて答えるのが正解なのかはわからなかった。ただ、ここで誤魔化すような真似だけは出来なかった。

「……ああ、もうちょっとこっちに居るよ。シェスカと遊べないのは寂しいけど……シェスカや皆が危険に晒された時のためにも、俺はここで頑張らないといけないんだ」

「…………」

 目には涙をため、今にも大声で泣きわめこうとしているシェスカだったが、シェスカは俺の服に自分の顔をこすりつけて涙のついていない顔をこちらに向けた。

「……帰ったら一緒に遊ぼ?」

 涙をこらえているシェスカは弱々しい声になっていた。だが、前なら強引に自分の意思を押し通そうとしていた彼女が、我慢して相手の意思を尊重してくれたという事実に、俺は涙腺が崩壊しそうになった。

「ああ、帰ったら一緒に遊ぼうな」

「うん!」

 泣くのを我慢していたシェスカは、俺の言葉に大袈裟過ぎる程、満面の笑みを見せた。


 こうして女神様と万里華、シルヴィ、ユリスティナ、シェスカの4人は聖域に帰っていった。ハナさんとも久しぶりに会ってみたいと思っていたが、彼女とはどうやら後1ヶ月は会えないらしい。

 でも、長ければ長い程、再び会えた時の喜びは大きいものなんだろう。ならば、次会うその日までに、彼女達全員をがっかりさせないくらいには強くならないといけない。

「その為にはまず、小僧を次の段階にレベルアップせねばならんな」

 低く辺りに響く声。そんな声が聞こえたのは、俺の後ろからだった。


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