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その言葉に驚きが無いといえば嘘になる。ただ、思っていたより自分は冷静だった。
「……あの二人って神獣化出来なかったんだね……」
「普通は出来ないんだよ。ファルナちゃんやあたちは例外中の例外! ……本来ならあたちみたいに麒麟様とその眷族様が指導してくれるはずだったんだけど……人間達のせいで、あの二人はその権利をはくだつ? されちゃったの……」
「それは……すまなかったな……」
「おじちゃんは悪くないよ。むしろ感謝してるんだ~」
「感謝?」
「うん!」
そう聞くと、ドルチェはこちらに向かって子どもらしい笑顔で頷いた。
「おじちゃんはファルナちゃんを苦しみから救ってくれたんでしょ? おじちゃんのお陰であたちはファルナちゃんと会えたんだよ! 最高のお友達になれたんだよ!」
そう言われるとは正直思わなかった。ファルナを助けたことを後悔なんかしない。それは、彼女自身が向ける笑顔に裏表が見えないからだ。彼女は子どもを司る女神の眷族という立場に幸せを感じている。
それなら、他の3人は?
共に眷族という道を確約されながら、悪い人間達の欲でその道を閉ざされた他の3人は?
子ども達は笑顔を見せてはいるが、内心では人間や元人間の俺に怒りを抱いているんじゃないかと思ってた。
「そっか……それなら良かった……」
「うん。……だから、おじちゃんが神獣族の力を酷使するような奴だったらどうしようか迷ってたんだ……。でも、安心した……おじちゃんが酷い眷族じゃなくて」
笑顔で嬉しいことを言ってくれる彼女を見ながら、俺は笑顔の裏で少しだけ驚いていた。
まさか、一番何も考えてなさそうなドルチェが、俺を見張っているとは……てっきり、スーが俺の行動を判定してるんだとばかり思っていた。
ただ、そんなことを考えている余裕はなかったし、逆に気張らずいつも通り動けたのが良かったのかもしれない。
(……まぁ、俺を判断するって言ったって、後1ヶ月程度しか一緒にいられないんだけどね……)
そんなことを思いながら、俺はドルチェと共に皆のところに戻った。




