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「ねぇねぇおじちゃん! このお肉美味しいよ~!」
女神様と話していると向こうの方から紙皿を持ったドルチェが駆け寄ってきた。俺がそちらから視線を外し、女神様の方を見ると、既に女神様の姿はなかった。
「おじちゃんも食べる? おじちゃん頑張ったからご褒美あげるね」
そう言いながら、フォークに刺さった肉を俺の口元まで持ってくる。それを俺は「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えながら食べた。
シルヴィと万里華の二人が準備したバーベキューの肉は、俺のアイテムボックスに入っていたモンスターをミハエラさんが捌いたものだ。アイテムボックスの能力を使えるのは俺だけなのだが、アイテムボックスに収納されている物は天界にあるらしく、ミハエラさんや女神様も天界で取り出すことがある。また、道具等を天界から入れることも出来るらしく、新しい項目が稀にあったりする。
「おじちゃんはなんでこんなところにいるの? 皆と一緒に食べなくてもいいの?」
そう言いながら、ドルチェは俺の隣に座った。
「ちょっとこっちに用事があったんだよ。お話も終わったし、俺もあっちで食うとするか……」
「本当!? じゃあ一緒行こっ!!」
無邪気な笑みで嬉しそうに俺の服を引っ張る少女を見て、なんだか微笑ましくなった。
「もちろん! でも、ドルチェちゃんと少しだけお話しとかないとね」
「あたちに~?」
指を顎につけて首を傾げる彼女に、俺は小さく頷くことで肯定の意を示した。
「ドルチェちゃん……君は今回の試練内容を知ってたのかい?」
俺の隣に座った青髪の少女は俺の質問に驚いた顔を見せた。だが、すぐにあどけない笑顔を見せた。
「なんのこと~?」
元々、肯定されるとは思っていなかった。だが、それでも俺には確信があった。
「最初は普通の子だと思ってたよ。偶然装置に触れて、蜂の仕掛けを起動させたんだとばかりね……でもさ、なんで最後の試練がドルチェ無しだとクリア出来ないって知ってたんだ?」
「…………」
ちらりと横を見れば、少女の顔は笑顔でも驚いた顔でもなかった。真顔。何の感情も見せない真顔で俺の婚約者達に囲まれている3人の子どもを見ていた。
その表情が俺にはなんだか怖かった。




