36-30
「……俺は彼女達に悲しい思いをさせてばっかりだな……」
優真は遅れてやって来た神獣族の3人と一緒に食事をしている万里華を見ながらそう呟いた。
先程、万里華が自身に与えられた能力で優真の傷をほとんど治してみせた。
「明日には眷族としての力が働いて完治しているとは思うけど……絶対に今日1日は安静だかんね! 次はないかんね!!」
万里華にそう釘を刺されたことで優真もさすがに反省した。
「……だったらこんなところにいないで皆と食べてくればいいじゃん。私は別にこっち来いなんて命令は出してないよ?」
皆から少し離れたところで用意された夕食を丸太に座りながら食べていた優真に、横から声がかけられた。優真がそちらを見ると、そこには幼い姿の少女が取り皿の上に置かれた焼き肉を立ちながら食べていた。
「そうもいかないよ。女神様には聞きたいことが色々あるしね……」
「私には聞かれたいことはないよ」
「そう言わんでくれ……ここまで頑張ってきた俺にご褒美の一つくらいあったっていいだろ?」
「はぁ……で? 何が聞きたいの?」
「先ずはシルヴィ達の件だ。……大丈夫なんだよな?」
「まぁね……大地の女神様が自分の眷族達を聖域に戻して、警備を強化したらしい。いくつかモンスターが入りこんでくる事件が起こったものの鎮圧に1分もかからなかったそうだ。特にメルルという次期眷族筆頭候補の少女は優真君が苦戦していたタイラントグリズリーを5匹も瞬殺してたよ」
「へぇ……なら、少しは安全だと考えていいの?」
「もちろん。ハナちゃんだっているんだし、今の聖域は下級神が数人で束になってかかってきても負けはしないよ」
「そいつは頼もしいね……それで、そのハナさんは?」
優真は先程から見当たらない女性の名を出すが、女神は悲しそうな顔を見せるだけだった。
「ハナちゃんはねぇ……優真君に合わせる顔がないんだとさ……自分があそこで聖域も危険かもしれないなんて言わなければシルヴィちゃん達が危険な目にあうこともなかった……だってさ……100分の1にも充たない確率だったにも関わらず、逆に危険な方向に導いてしまったことを彼女なりに後悔しているみたいだ……」
「そっか……でも、俺は彼女を責める気はないよ。ハナさんはもしものことまで想定していたんだ……俺がもっと強ければ解決した話だよ……」
「優真君がそう思っていても、そう簡単に解決できそうにないと思う……だから今はもう少し時間をあげてよ……優真君と向き合えるその日までね……」
「わかってるよ……最後に一つ」
「まだあるの!?」
「うん。……最後にこれだけはどうしても聞いておきたかったんだ……」
優真はその質問を口にしようとした瞬間、本当にしてもいいものなのか迷った。だが、ここで聞かねば次いつ聞けるかわからない。
そして、優真は決心した眼差しで女神を見る。
「女神様は……ホムラを生き返らせる方法は知ってるのですか?」




