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36-27


 不機嫌な様子のファルナに再び肩を借り、俺は不安定な足場を進み始めた。

 俺のせいでペースは遅いものの、山頂にはかなり近付いたように思えた。

「あれ?」

「どうした、ファルナ?」

 いきなり立ち止まったファルナに俺が疑問を抱くと、彼女はいきなり匂いを嗅ぎ始めた。そして、その目を輝かせた。

「お肉ッ!!」

 そう言ったファルナは、俺を支えていた腕に力を込め、とんでもないペースで山を登り始める。急なことで足が止まっていたにも関わらず、俺の腕をがっしりと握っていたため、俺まで引きずられてしまった。

「ちょっ待っ!! 痛い! 痛いから!! ストーッップ!!!」

 引きずられているせいで木の根や石に体のあちこちをぶつけながら俺は必死に彼女を呼び止める。

 だが、昼飯抜きにされた彼女の目は前しか見えておらず、もしかすると俺の存在すら忘れられているんじゃないかと思う程だった。

 後ろで制止の声が聞こえたものの、スピードが弱まることはなく、そのまま先頭を歩いていたドルチェも抜いてしまった。


 そんなファルナが急に止まった。

 訳がわからないままの俺は顔を上げて前方を見ようとするが、そのタイミングでファルナが俺の手を放して「わ~い!!」と嬉しそうな声をあげ、そのままどっかに行ってしまった。

「……超いてぇ……」

「……大丈夫ですか?」

 慌てたように誰かが駆け寄ってきたのを足音で俺は知った。しかし、頭を上げる気力も体を起こす気力も湧いてこない。

「……これが大丈夫なように見える?」

「……とてもそうには見えませんね」

「まぁ……ここまで来れば俺にだって旨そうな匂いが漂ってくるのがわかるけどさぁ……」

「はい、ユーマさん達のために下拵えから頑張りました。だから思う存分食べてくださいね」

 声の主に体を支えられながら、うつ伏せだった俺はどうにか正座の状態になるが、体を自分の力で支えきれず、再び倒れそうになった。すると、その女性が再び体を支えてくれた。

「あ……ありがとね……にしても、知り合いに声がよく似てるなぁ……」

 意識が朦朧としていたこともあり、視界が未だにぼやけるなかで、体を支えてくれたその女性を見ると茶色なのか黒なのか判断しにくい色の髪をツインテールにしている女性の姿がかろうじて見えた。

「なんだか髪色や髪型も似てるし……爺さんのところの天使にも美人が多いんだなぁ……」

「ふふ……ありがとうございます」

「…………!? なんでここにシルヴィがいんの!!?」

 視界がようやく回復したかと思えば、そこに映ったのは彼女に似た女性などではなく、優しい笑みをこちらに向けていたシルヴィ本人だった。

「お久しぶりです、ユーマさん。ですが、私だけではないんですよ?」

 その直後に、「お兄ちゃ~ん!!」という声が響き渡り、体に激痛が走った。


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