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36-24


「よ~し、僕も!」

 優真が刀を鞘に戻したのを見て、ファルナは攻撃を再開しようとするが、それを優真は手だけで止めた。

「とってもありがたいけど、ファルナとスーも少し休んどいてくれ。ここまでよく頑張ってくれたね……後は俺に任せて、二人はドルチェとイアロのところで待ってなさい」

 優真にそう言われた瞬間、ファルナはまだやれると言おうとしたが、優真から流れる雰囲気がそれを許さなかった。

「さて……後何回で壊れてくれるかな……」

 優真は再び構えをとり、松葉翡翠の断ちを放ち始めた。


 ◆ ◆ ◆


「お兄さん、ダメ! それ以上やったらマリカお姉さんに怒られるよ!」

 ファルナは焦ったようにそう言うが、優真はその言葉に答えようともしていなかった。彼の目は壁を見続けており、その目に疲労の色は見えても、諦めの色だけは見えなかった。

 ただ、彼の意志とは異なり、体はボロボロだった。

 壊れることのない壁に向けて、何度も何度も斬撃を飛ばす。何度か斬撃が飛ばないことはあったが、それでも彼は刀を振るった。

 全身の力を使って、強力な斬撃を飛ばす『松葉翡翠の断ち』は、体に相当な負担をかける。治療してあるとはいえ、重傷の状態で行うべき技じゃない。現に、壁は傷すらついていないのに、優真の体は傷が開いてところどころが赤くなっている。

 数分前から、握力も完全になくなり、アイテムボックスから取り出した包帯で刀と自分の手を固定した。そのせいで威力は更に下がった。

 それでも、優真の目は死んでいなかった。


「なんでそんなに頑張るの?」

 荒い息を吐いていた優真にいきなり後ろから声がかけられた。しかし、優真は後ろを振り返らなかった。

「……そりゃ……これが俺の壊すべき壁だからだよ……」

「どういうこと?」

 再び投げ掛けられた質問に、優真は答えるべきかどうか悩んだ。だが、なぜだか答えなくてはならないと思った。

「……俺は……まだまだ弱い……! ……俺が弱かったから……ホムラを守ることが出来なかった。……こんなところで躓いてる場合じゃないんだ……俺はもっと……強くならないといけないんだ!!」

 叫びながら放った一撃は、今までのものよりかなり強力で、轟音を立てながら壁に当たった。砂煙が立ちこめ、ようやく晴れたその壁には今までつくことがなかった傷がついていた。

「……はは……あんだけ放っても、あの程度か……やべぇ、もう足に力が入らねぇ……」

 崩れ落ちた優真が、ようやくつけることのできた傷を見てそう嘆くと、先程から声をかけていた少女が膝をついている優真の隣に立った。

「充分、充分……後はあたちに任せなよ!」


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