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36-22


「ごめんな、ファルナ……本来なら俺が警戒をこなさないといけないのに……」

 申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、俺は前方でキョロキョロと周りを警戒しているファルナにそう言った。その直後、ファルナはその顔をこちらに向ける。

「大丈夫! 僕ね、お兄さんの役に立てて嬉しいよ!」

 子どもらしい笑顔でそう言った少女は、立ち止まって少し遅れていた俺達を待ってくれた。

 彼女の可愛さと成長ぶりに涙腺が緩みそうになるが、俺はそれをグッとこらえた。子ども達に涙を見せては、不安な気持ちにさせてしまうからあんまり見せたくないのだ。

「結構歩いたし、もう少しで着くよ。そしたら最後の試練も突破して……皆で美味しいご飯を食べような!」

 その言葉で、目を輝かせたのはファルナだけではなかった。

 イアロとスーの足もさっきより速くなった気がするのは……おそらく俺の気のせいなんかじゃないだろう。


「お肉~お肉~今日のご飯は美味しいお肉~」

 ファルナの陽気な声を聞きながら、俺達は歩いていた。既に第3試練の場から20分は歩いているが、未だに試練らしきものは見当たらない。

「……もうすぐ頂上だと思うんだが……もしかして、最後の試練は頂上で行われるのか?」

 そんな疑問を俺が抱いた瞬間、前方から「あいたっ!?」という悲鳴と共に、何かにぶつかったような鈍い音がこちらの方まで聞こえてきた。

 前を向くと、前を歩いていたファルナが何もない場所でうずくまっていた。

「大丈夫か、ファルナ!」

 痛みで動きが鈍くなっている自分の体に鞭打って、急いで彼女の元に駆け寄ると、ファルナは涙目になっていた。よく見ると、おでこが少し赤くなっている。

「だ……大丈夫か?」

「~っもう! なにこれ!」

 徐々に怒りの感情を抱き始めたのか、頬を膨らませたファルナはそう言いながら、何もない空中を蹴り始めた。すると、壁を蹴った時と同じような音が聞こえた。

 俺も訳がわからないまま、その何かに向かってノックをしてみると、見えない壁が出来ているような気配を感じた。

「こりゃ壁だな……しかも高さと横幅がかなりあるな……もしかして最後の試練か?」

 そう呟いた瞬間、目の前に広がっていた見えない壁が灰色になっていった。


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