36-20
俺が目を覚ました数分後、スーとファルナの二人は目を覚ました。ファルナは俺が起きているのを見た瞬間、すごい勢いで抱きついてきた。そのせいで体に激痛が走るが、俺が生きていたことを泣きながら喜ぶ彼女を責めることは出来なかった。
スーは俺の姿を見て、一瞬だけホッとしたような顔を見せたが、すぐに顔をそらされた。彼女には爺さんの件で嫌われているとばかり思っていたが、俺のことを心配くらいはしてくれているようだ。
俺が倒れた後の5分間については、スーとファルナが寝ている間にイアロから聞いていた。なんでも、俺が体を張って子ども達を守った後の針は、神獣化したスーが半球体の防壁を出して守ってくれていたようだ。その圧倒的な防御力に針は傷をつけることすら叶わず、イアロも俺の治療に集中できたらしい。
見た目は俺が予想していた通りの玄武と呼ばれる大きな亀と酷似しているらしい。一度でいいから見てみたいもんだ。
「あの量の攻撃をたった一度だけ展開した防壁で防ぎきるんだから……とんでもないなぁ…………ん?」
散らばった針を見ながら俺がスーの防御力に感心を示していると、ファルナが、イアロとなにかを話しているスーのところまで歩いていくのが見えた。
「……どうかしたの?」
イアロと話していたスーチェは、いきなり自分の前に立った癖に黙ったままでいるファルナにそう聞いた。しかし、彼女はもじもじとしているだけで、なかなか話を切り出してくれない。
(……初めて見る色だなぁ……)
感情の色を見ることができるスーチェは、ファルナが自分に対してどう思っているのかがわからなくて、彼女の色を見ようとした。しかし、ファルナの色は黄色に近いクリーム色をしており、それを初めて見るスーには、彼女がどういう感情を抱いているのかがよくわからなかった。
「あ……あのね……」
ようやく開いた口に、スーチェは読めない心を見るのを諦め、意識をファルナの言葉に集中させた。
「スーちゃんのこと……役立たずとか、足手纏いなんて思ったこと……本当にごめんなさい……」
いきなり謝られたことで、スーチェの顔には驚きの色が浮かんでいた。
確かに、自分のことをそう思っていたことくらい、スー自身も知っていた。だが、謝罪の色はその色じゃない。そんなに輝いている筈がない。もっと暗い色だ。




