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「……くそ……がっ……!!」
飛んで来た針をなんとか打ち落とした優真は、膝に手をついて荒い呼吸をし始めた。しかし、すぐに意識を切り替え、次の攻撃に備える。
「……ちくしょう……わかってはいたが……多すぎんだろ!!」
そう言いながらも、『伍の型、白桜の舞い』で次々と針を叩き落としていく。避けたりもしてはいるが、それはどうしても防ぎきれない攻撃であり、なおかつ子ども達に被害が出ない物だけだ。それ以外は全部叩き落とすことにしていた。
そのお陰か、30分が経った今、子ども達に傷の類いは見当たらない。
だが、優真は違った。
体のあちこちに傷があり、幾つもの針が体に刺さっている。
抜けば出血死になるのは目に見えているからこそ、抜かずに対処してはいるが、それでも動きは鈍くなる。現に今も落とせなかった針を体に受けてしまっている。
優真自身が一番わかっている。自分の考えている動きに体がついてこれていないことくらい。それでも、子ども達に針が当たることだけは許されない。
「これでっ……最後っ!!」
優真がそう言って針を叩き落とす。しかし、最後の気力を振り絞って振るったことで優真は転倒してしまう。
表示されたデジタル時計は、残り5分だと書かれており、すぐに体を起こそうとするが、腕にうまく力が入らない。握力も弱りきっており、刀がうまく握れない。
5秒後には再び針の発射が行われる。
それまでに、体を起こす必要がある。こんなところで寝ている場合じゃない。
だが、それで限界の体に力が入る訳じゃない。
限界なんてそう簡単に越えられないから限界なのだ。
自分にしては頑張ったほうだろう。
刀だけでここまで頑張った。後ろの子ども達も傷一つない。山登りなんて、今までほとんどしたこと無かったのに、子どもを背負ってここまで来た。疲労した状態で、よくここまで頑張ったもんだ。
本当に……よく頑張った……
「……だったら最後まで……ちゃんとやり遂げないとな……」
そう呟いた優真は右手の拳を地面につけた。




