表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
530/970

36-16


「……くそ……がっ……!!」

 飛んで来た針をなんとか打ち落とした優真は、膝に手をついて荒い呼吸をし始めた。しかし、すぐに意識を切り替え、次の攻撃に備える。

「……ちくしょう……わかってはいたが……多すぎんだろ!!」

 そう言いながらも、『伍の型、白桜の舞い』で次々と針を叩き落としていく。避けたりもしてはいるが、それはどうしても防ぎきれない攻撃であり、なおかつ子ども達に被害が出ない物だけだ。それ以外は全部叩き落とすことにしていた。

 そのお陰か、30分が経った今、子ども達に傷の類いは見当たらない。

 だが、優真は違った。

 体のあちこちに傷があり、幾つもの針が体に刺さっている。

 抜けば出血死になるのは目に見えているからこそ、抜かずに対処してはいるが、それでも動きは鈍くなる。現に今も落とせなかった針を体に受けてしまっている。

 優真自身が一番わかっている。自分の考えている動きに体がついてこれていないことくらい。それでも、子ども達に針が当たることだけは許されない。


「これでっ……最後っ!!」

 優真がそう言って針を叩き落とす。しかし、最後の気力を振り絞って振るったことで優真は転倒してしまう。

 表示されたデジタル時計は、残り5分だと書かれており、すぐに体を起こそうとするが、腕にうまく力が入らない。握力も弱りきっており、刀がうまく握れない。

 5秒後には再び針の発射が行われる。

 それまでに、体を起こす必要がある。こんなところで寝ている場合じゃない。

 だが、それで限界の体に力が入る訳じゃない。

 限界なんてそう簡単に越えられないから限界なのだ。

 自分にしては頑張ったほうだろう。

 刀だけでここまで頑張った。後ろの子ども達も傷一つない。山登りなんて、今までほとんどしたこと無かったのに、子どもを背負ってここまで来た。疲労した状態で、よくここまで頑張ったもんだ。

 本当に……よく頑張った……

「……だったら最後まで……ちゃんとやり遂げないとな……」

 そう呟いた優真は右手の拳を地面につけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ