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6-2

「ユウマ君、少し休憩にしましょう!」


 あれから更に1時間の時が経ち、優真を襲ってくるモンスターの数も徐々に減ってきたため、ハルマハラは優真に声をかけた。

 【勇気】の効果を存分に発揮していた優真も、さすがに2時間も神経を磨り減らしながら、モンスターを狩り続けていれば、疲労も溜まる。そう思って休憩を提案したのだが、優真はやめようとはしなかった。

 しかし、ハルマハラにとって2時間ではあっても、優真にとっては能力の影響で約5時間も戦っていた。

 攻撃を受けることはないからか、身に纏った服には、血がついていない。斬った直後に後方へ瞬時に下がることで返り血も浴びていない。

 5時間も休まず戦えれば、充分だとは思うが、それでも自分の弱さを変えたいと願う優真にとっては不充分だった。

 だが、体は限界を先程から訴えかけてきており、ハルマハラの言葉で気が緩んだ優真は、その場に膝をついて荒い息をし始めた。


 ◆ ◆ ◆


 ハルマハラは、動けなくなっていた優真に肩を貸し、木の下まで連れていった。

 ハルマハラが持ってきていた水筒を渡すと、優真は入っていた水を喉に流し込み、すぐに飲み干してしまった。

「……すいません、師匠。ありがとう、ございました」

「こちらこそ申し訳ない。君の状態をうまく把握出来なかった私のミスだ。……しかし、君も森を甘く見すぎだ! もしも今回、君が一人で森に入っていた場合、体力を失った状態でどうやって村まで帰ってくるつもりだったんだい? 2時間前に君は、彼女にはずっと笑顔でいて欲しい、と言っていたが、それは君が死ぬことで得られる結果なのですか? 違うでしょう? あなたが死んだり、怪我を負ったりすれば、彼女は当然悲しみますよ。……もう少し、自分を大切にしなさい」

「…………すいません、肝に銘じます」 


 ハルマハラさんの言うことは、もっともだと思えた。

 死の辛さってのは、あんな経験をした俺自身が一番わかってるだろうに……。別に死にたいなんて思ってないが、自分の体なんて気にしたことなかったのも事実だ。

 ハルマハラさんが止めてなかったら、多分倒れるまでやってたと思う。

 そういう点でもハルマハラさんには感謝が絶えない。

 この人が今回同行してくれて本当に良かった。


 そのハルマハラさんはというと、目の前で弱った獲物()を狙ってやってきたモンスターの処理を行い始めた。

 俺と違って、時が止まった空間でやっている訳でもないのに、その鋭く細い剣がモンスターの急所を貫いている。

 一度だけ、俺が背を預けている木の後ろから、ライトニングパンサーというBランクモンスターが襲いかかってきた。

 その名が示す通り、素早いモンスターだったが、【勇気】の前では、その身体能力も意味をなさない。

 右手に握った剣で空中に止まったライトニングパンサーの首を狙おうとした時に気付いた。


 そいつは、俺が何もしなくても時が動いた直後に死ぬ。

 なぜなら、脳天の前には金属で出来た細く10センチ程の杭が置いてあったからだ。

「…………待機を選択」

 その言葉の直後、ライトニングパンサーは絶命した。


 俺が休み始めて20分が経過した時だった。

「そういえばユウマ君、君は魔法を見たことがありますかな?」

 いきなり、ハルマハラさんがこっちを向いてそう聞いてきた。

「……いえ、見たことありません」 

「ふむ、なるほど……では、とっておきの魔法をお見せしましょう!」

 ハルマハラさんがそう言った時には、この場にモンスターの姿はなかった。

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[良い点] 敵が迫ってきたりはぐれたりする状況等のじわじわした恐怖感、緊迫感、焦燥のみでなく子供を守らねばならない負荷や悲壮感もムードを作っていて、それをクリアするための条件付きスキルの威力や出るタイ…
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