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36-10


 第2試練の場に向かって歩き始め、俺達は舗装されていない山道を登っていた。

 気を失ったイアロを俺が背負い、ドルチェはスーが背負って山を登る。既に日は真上にあり、お腹が空き始める頃合いだが、先頭を走るファルナと、後ろを歩くスーは文句を言わないでいてくれる。これがシェスカなら、俺の足を叩き始めることだろう。そういう意味でも二人には感謝しかない。

(まぁ……俺一人ならそんな心配もしなくていいんだけどな……)


 しかし、そんなファルナであっても1時間も黙って歩けば我慢の限界がくるのだろう。

「ねぇ、早くしないとご飯食べれないよ!」

 俺のところまでやって来て、いきなりそう言ってきたのだ。

「そんなこと言ったってなぁ……」

 そう答えながら、俺は一歩一歩ゆっくり歩くスーの方をちらりと見た。

 別に急いでほしい訳じゃない。ドルチェが小柄な体格だからといって、少女一人を背負っているスー(彼女)にこれ以上無茶な要求は出来ない。

 それならば、彼女のペースで歩くのが俺の役目だ。しかし、ファルナはそんなことはお構い無しだ。だが、ファルナを責めることも出来ない。

 ここまでずっと歩きっぱなしのファルナが疲れているのは明白だ。そんな彼女にクリアするまでご飯無しだと伝えたのは俺だ。そんな話を聞けば早くクリアしたいと思うのが普通だろう。要するに俺の見通しが甘かったのだ。

 第1試練で、ドルチェを守ることが出来なくて、イアロとドルチェの二人が動けなくなった。

 こんな調子では、今日までに試練を突破するなんて不可能だ。日が延びれば、もっときつくなっていく。

(せめて現地調達なら良かったんだがな……)

 制限がかけられているせいで、水以外の食料品はアイテムボックスから取り出せない。こうなってくれば、頭の良くない俺にだってわかる。

 あのジジイは、天界で俺達の様子を見ているのだ。 

「なぁファルナ……悪いけど、もう少しだけ我慢していてくれないか? 見た目と歩いた距離で考えれば、既に山の半分は越えてる……試練さえ乗り越えられれば、シルヴィと万里華が最高の料理を用意してくれるはずだ」

「い~や~! ドルチェちゃんもイアロちゃんも寝ちゃってるからつまんないし、スーちゃんは遅すぎるし、しゃべってくんないもん!!」

 文句を言ってくるファルナのその言い方は、シェスカのとよく似ていた。

(やっぱり、普段一緒にいるからかなぁ……)

 ファルナの言葉にそんな感想を抱いた俺だったが、その時偶然見えたスーの表情を見て、息を飲んだ。


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