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36-7


 握りしめた鞘から引き抜かれた赤く輝く刃を持つ刀が俺の意思によって飛び交う蜂を切り裂いていく。

 子ども達に当たらないように蜂と蜂の間に引かれた線をなぞって刀を振っていく。

 子どもが襲われているという状況下であるにも関わらず、【勇気】と【ブースト】が発動する兆しを見せない。いつもとの違いに戸惑いつつも、自分達に襲いかかる蜂を俺は斬り続けていった。

 そして、動く蜂が居なくなった時には、背中にいるスーの存在は苦にもなっていなかった。


「ふぅ……皆無事か?」

「うん! お兄さんのお陰で無事だよ!」

「ボクも……大丈夫です……おじさん、かっこよかったです」

 俺の質問に、後ろにいたファルナとイアロは自分の無事を伝えてくれた。

「そうか、それは良かった。……ったく、こういうのは、ちゃんと準備してから挑む……って、どうしたドルチェ?」

 呼ぶときには心掛けていたちゃん付けを忘れてしまう程、ドルチェの様子がなんだかおかしかった。涙目になりながら自分の左腕を押さえている。

「まさか……」

 急いで彼女の元に行き、彼女の右手をどかすと潰れた蜂と赤くなった傷が見えた。

 彼女に近付く蜂も一匹残らず斬ったから絶対に大丈夫だと勝手に思っていた。しかし、刀を抜いた時には、蜂が出現しており、一番近くにドルチェがいた。もし死角に回り込まれていたのだとすれば、俺は見逃してしまったことになる。いや、実際に起こっているのだから見逃してしまったのだ。

(くそっ! 毒の対処なんて大学でだって教わってないぞ!)

 必死に今まで習った知識で対処を試みるが、ドルチェの泣き叫ぶ声しか聞こえない。明らかにわかる命の危機。だが、対処のしようがない。いつも頼りにしていたアイテムボックスにも新たに追加されたものはない。【勇気】が使えればこんなことにならなかったと後悔する気持ちが徐々に頭を支配していく。

 特殊能力が無ければ、自分は役立たずなんだと自分で自分を責め始めてしまう。

 そんな時だった。


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