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相手が生き返ったことに驚きはない。優真自身この空間に来てから何度も体験していることで、そこに驚きはないが、麒麟の言った言葉には驚きしか無かった。
「まだあるんすかぁ……」
すごく嫌そうな顔を見せる優真の前で、麒麟の体が光り始め、老人の姿になっていく。
「当たり前じゃろうが……小僧はわしの攻撃を1発避けて、運良くわしを殺すことが目的じゃったか? 違うじゃろ?」
「……確かにそうだけどさ……」
優真の目的は時空神が認めるくらい強くなること。確かに麒麟の攻撃を1発避け、不意討ちで殺したところで、認められるとは到底思えなかった。
「それで? 次は何をすりゃいいんですか?」
「そう慌てるんじゃない。小僧の主神から聞いた話じゃと、小僧の特殊能力は、身体能力を倍加させるものらしいな」
「まぁ……そうですけど……」
「要するに基礎能力を高めれば、そのぶん小僧は強くなるということじゃな。という訳で、今回は4人のスペシャリストを呼んでおる」
「……スペシャリスト?」
麒麟の言葉に疑問を抱いた次の瞬間、誰かに背中をタックルされた。不意をつかれた優真はそのまま芝生の大地に倒れるが、体の上で聞き覚えのある笑い声が二つ聞こえたことで、倒れたまま溜め息を吐いた。
「ねぇねぇお兄さん、びっくりした~?」
「おじちゃんびっくりした~?」
「……ったく、ここは危ないから近付くなって言っといた筈なんだが……」
手をついて体を起こす優真の視界には、背中の上から移動した白髪の少女と青髪の少女が無邪気な笑みを浮かべる姿が映っていた。
「ファルナちゃん、ドルチェちゃん、そんなことしたらおじさんに怒られちゃうよ?」
「…………眠い……帰りたい……」
新しい声が聞こえたことで、優真はそっちに顔を向ける。そこには眠そうな少女の背中を押している赤髪の男の娘がこちらの方に向かってきていた。
「なんで二人まで……?」
「そりゃあ、彼女達が小僧の修行相手じゃからな」
「はぁ!?」
麒麟の発言は先程よりも大きな驚きを優真にもたらした。




