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「そうだね。やっぱり……ミハエラや母様、それに時空神様と破壊神様のお陰だよ。……だからこそ、皆の期待に応えないと……」
子どもを司る女神がそう答えると、老人の姿になっている麒麟は小さく笑った。
「ふっ……時空神のばばあが何を考えとるのかようわからんが、結局全ては小僧次第じゃ……あの小僧が優勝できなければ、全て終わりじゃ……貴殿も覚悟はできておるんじゃろうな?」
「…………うん……」
その問い掛けに悲しそうな表情で頷く少女を見て、麒麟は深い溜め息を吐いた。
「最後にもう一度だけ言っておくが、わしはあくまで貴殿の父君側についておる。じゃが、貴殿の父君に仰せつかった通り、絶対公平の立場は守るつもりじゃ。『神々の余興』に立つ資格が無いわしじゃからこそ、今回の修行は父君には黙っておいてやろう」
「……ごめんね。色々迷惑かけちゃって……」
「構わぬ。それにあの小僧はイアロの危機とファルナの危機を救った男じゃ。期待に応えてくれたのであれば、わしはわしなりのやり方であの小僧に借りを返してやろう」
それだけ言うと、老人は別れの言葉も告げずにその場から消えてしまった。
「行ってしまわれましたね」
沈黙の空間に聞こえた女性の声で、正座をしていた少女は胡座をかきはじめた。
「……まったく、あの方はいつもいつも唐突過ぎるんだよねぇ。いきなり私の空間で優真君達の様子が見たいとか……自由にも程があるでしょ」
不満そうに言った主神の言葉にミハエラは否定も肯定の言葉も告げなかった。
「私はそれよりも優真様が心配です。ただでさえ、ホムラ様を亡くされて心を痛めているというのに、何度も殺される体験を受けるなんて……もしも彼の精神が壊れてしまったらと思うと……」
「……そうだね。でも、彼なら大丈夫だと信じるしかないのさ。それが私達に出来る唯一のことだからね」
そう言った女神はテレビ画面を再び見た。そこには寝ている青髪少女に顔を蹴られている優真の姿が映っていた。




