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(男の娘って実在する生き物だったんだ……)
目の前で布団に入っておしゃべりしている子ども達を見ながら、俺はそんなことを思っていた。
見た目や声の高さから、明らかに女の子だと思っていた。風呂の時も、あの時まではタオルで隠していたから、全くわからなかった。だが、他の3人にはわかっていたらしいし、本人に尋ねてみれば、普通に男だと答えた。要するに、俺が見た目だけで決めつけて勝手に女の子だと思っていた相手は、可愛い見た目の男の子だった訳だ。
(というか、あんな可愛い生き物の性別を一瞬で見破れって方がどだい無理な話だよな……)
それに、よくよく考えてみれば、たいした問題じゃない。女の子だろうが男の子だろうが、世話することにかわりはない。むしろ、やりやすくなったと考えることも出来る。
「……それに、今の俺にはそんな事に気を回している余裕はないしな……」
「お兄さんどうかしたの?」
白い尻尾をふりふりさせながら近付いてきたファルナは、そんなことを聞きながら胡座をかいている俺の膝に座った。
彼女の様子はとても楽しそうだった。おそらく同年代の友達ができて嬉しいのだろう。
「明日も早いからさっさと寝ないといけないなって思ったんだよ……」
俺の方を見上げてくるファルナにそう答えるとファルナは目を輝かせた。
「じゃあね、じゃあね! 僕がお兄さんの隣で寝るの!!」
「はは……ファルナは甘えん坊さんだな……」
「うん! ファルナ、お兄さんに甘える! お兄さん大好き!!」
「そっか……じゃあ一緒に寝ような」
ファルナは俺がそう答えると満面の笑みを見せて、自分の枕を持って、俺の眠る場所に置いた。
スーは既に眠っており、俺は布団の中でスタンバってるファルナの隣に寝転がった。隣にドルチェが寝て、そのドルチェの隣にイアロが寝転がる。
こうして、俺の長かった1日が終わった。
◆ ◆ ◆
「ふむ……貴殿の眷族筆頭はなかなかやりおるのぅ」
「そりゃあ、私の自慢の眷族だからね」
真っ白な空間に老人の声と少女の声が響く。
6枚の畳が敷かれ、中央に置かれたちゃぶ台を挟んで同じテレビを見ていた白い髭が特徴的な老人とエメラルドグリーンの長髪が特徴的な幼き少女。幼き少女は老人に対してその薄い胸を張っていた。
「ふむ……自分の天使をうまく活用しとるし、天使を信用しておる。殺しの才能は皆無じゃが、少しは信用してもいいかもしれんな。特に幼き娘に手を出さない強靭な精神力も実に見事じゃ」
「そりゃあ、幼子に手を出す奴なんて私の眷族として失格ですからね。……でもまぁ、もしもそんなことをしたら鉄ちゃんの眷族筆頭に頼んで首ちょんぱしてもらいます」
「ふぉっふぉっふぉ、その時はわしが黒焦げにするから心配なさるな。……それにしても……まさか、貴殿が神になれるとはな……100年経った今でも信じがたいわい……」
先程まで笑みを見せていた老人の表情が真剣なものになったことで、少女は気を引き締めた。




