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34-9


「……逃げたか? 貴殿の眷族は随分と酷いものよのう」

 優真を蹴ったモンスターは寝転がりながら、近くに突然現れた幼き見た目の少女にそう声をかけた。

「ごめんね……せっかくおじちゃんが来てくれたっていうのに、こんなことさせちゃって……」

「構わぬ。元々時空神の眷族に作った貸しを解消するために出向いたのだ。貴殿の眷族にやる気があるのであれば、わしはそれ相応の仕打ちをしてやるだけだ。……それにしても……暴走したファルナを止めたのは本当にあの男か? とてもそうは見えんが……」

「まぁまぁ。勝負は始まったばかり……優真君を舐めてかかるとおじちゃんでもそう簡単には勝てないと思うよ」

「ほほう……では楽しみにするとしよう。……だが、約束は守ってもらうぞ。日が変わる前に良い結果が望めぬのであれば、わしは帰るからな」

「うん。それで構わないよ。それじゃあまた後でね」

 こちらにかわいらしい笑みで別れを告げた直後、彼女の姿は消えてしまっていた。

「……ふっ……まるで己の眷族がわしに認められるのを確信しているかのような言い方だな……」

 小さく笑ったモンスターは、自分以外の気配がなくなったその場所で、再び眠りについた。


 ◆ ◆ ◆


 普段の森では肉食系の四足モンスターが雄叫びをあげているにも関わらず、今宵は静かだった。だが、それも仕方ないだろう。

 絶対に勝てないと本能が訴えかけてくる化け物が、池のほとりで眠っているのだから。

 しかもその化け物は優真を誘き寄せるために、オーラを全開にしている。血気盛んなAランクモンスターでも、その範囲内には近付こうとしない。

 いるのは、たった一人だけだろう。

(……ほう……本当に来たか……)

 片方の目だけを開いて、自分のテリトリーに近付いてきた存在がどこにいるのかを確認する。

 前方600メートル先に、男のオーラが見えた。眷族になって一年も経っていないにしては、化け物じみている。だが、数百年も生きている他の眷族筆頭であれば、彼より上はざらにいる。


(……どうやら『処刑人形』に勝ったのはまぐれではないみたいだな……)

 そのオーラが、自分の方に少しずつ近付いてくるのを感じとるが、後200メートルになったところで、オーラの威力が強くなるのを感じ、攻撃が来るのだと感じた。しかし、しばらく経ってもこない。

(……怖じ気付いたか……腰抜けめ……)

 麒麟は攻撃を行うために立ち上がり、自らの体に帯電を始めた。そして、数秒の時間を要して、溜めた雷撃をその男目掛けて放った。

 強力な雷撃は前方に伸びていき、男が隠れているであろう木に直撃してもおさまる気配を見せなかった。

 雷撃の通った道は焼け焦げ、全て炭となって宙に舞っていく。そして、そこに人の姿は無かった。

「はっ……所詮は元人間……この程度で消し炭と化したか……」

「くたばれ害獣……曼珠沙華の舞い!!」

 終わりを確信した麒麟が高笑いをしようとした次の瞬間、いきなり後方でそんな声が聞こえた。


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