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34-4


 だが、彼女が俺のために作ってくれたのだ。

 少なくとも食べずに捨てるというのは、保育士を目指す者がやっていいことなのだろうか?

「あ……ありがとう……」

 彼女にしっかりとお礼を言ってから、ほどき終えた弁当箱のふたを開く。そこにあったのは真っ黒焦げの何かだった。

(……これなんかアニメで見たことある……確かダークマターとか呼ばれてた食べ物と言えない何かだ……)

「……頑張って作った……」

「お……おう……ちなみにこれ何?」

「……何って……サラダ?」

「サラダ!!?」

 もはや火すら使われないような代物がなぜこんな真っ黒に!?

「……あ……ああ! これって海藻サラダなんだな!」

「ううん……ポテトサラダ……」

(……黒いやん。……絶対ありえへんやん。なんで白いはずのポテトサラダが真っ黒なんの? てか、案の定ザクザク音鳴るし……そもそもポテトサラダで黒焦げって……)

 これが意図的なのか、それとも偶然なのか、相変わらず彼女の表情からは何も読み取れない。

 正直、作り方を教えて欲しいところだが、多分俺なんかじゃこの領域には辿り着けないだろう。

「……いいから食べて……」

 ずっと見つめるだけでいたかったダークマターにフォークが刺さり、俺の口に突っ込まれていく。

 直後、この世のものとは思えない味と、到底ポテトサラダとは信じられないガリガリとした食感に、俺は地面で悶え苦しむのであった。


 ◆ ◆ ◆


 意識が朦朧としている中で、どうやら自分が気を失っていることに気付いた優真は暗い世界に光をもたらすために、瞼をゆっくりと開けた。その視界に映ったのは、青い空と緑色の葉、そしてこちらを見つめる銀髪少女のあどけなさが残る顔だった。

「……起きた?」

「…………何してんの?」

 後頭部にぷにぷにの感触を感じて、そんな質問をするが、なんとなく予想はついていた。

「……気持ちいいやつ……万里華が耳掻きしてくれた時やってたの……気持ちいい?」

 正直言って気持ちよくないはずがなかった。ただ、それはいつもの彼女はしない行動だ。料理だってすることもなかった。

「……何かあったの?」

 いつもと違う彼女の様子に、聞かずにはいられなかった。前のような失敗を犯さないためにも、俺は言葉を選んだ。

 俺の質問に彼女は少しだけ寂しそうな表情を見せて、小さく頷いた。


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