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「……そういえば、先程の質問ですが、私とユーマさんが隠れている理由は、先程この村に帝国の兵士がやって来たからです」
「帝国って、パルテマス帝国のことか?」
パルテマス帝国は、俺たちが住んでいるこの村がある国だ。
しかし何故それで隠れる必要があるのかはまったくわからなかったが、シルヴィがすぐに答えを教えてくれた。
「そのパルテマス帝国には、ここ15年の間に行ってきた一つの政策があるんです。それが戦士を育てるというものです」
「……え? 戦争やってる国ならどこも似たようなことやってるんじゃ?」
「……それが7歳から行うというもの、でもですか?」
シルヴィが言った言葉は俺に衝撃を与えた。
少なくとも俺はそんなことをやっている国を知らなかった。
7歳から? それってまだ小学生に成り立ての子どもじゃないか!
そんな子達に剣を持たせるなんてどうかしてるんじゃないのか?
「……ということなら、なんで俺とシルヴィはここに隠れる必要がある? 男の俺はともかく、シルヴィに関しては女性なんだから別に大丈夫なんじゃ」
彼女は俺の大丈夫という言葉を否定するように首を振った。
「先程の子ども召集は一定時期に行われます。一年ごとに7歳をむかえた子を王都へと連れていきますが、その際、8歳を越えた子どもがいた場合、非国民として犯罪者の烙印をおされてしまい、見つかり次第、王都へと連れていかれます。……それは、女性だろうと病人だろうと関係ありません。元々女性も、王都で強制労働を強いられます。週6の12時間勤務をそれが例え子どもだろうと、病気持ちだろうと関係なくさせられます」
「……抗うことは? そんな馬鹿げた政策、親達が許さないんじゃないのか?」
「この国において、弱肉強食は絶対の掟。そして、パルテマス帝国には、冒険者の資格を持っていれば間違いなくS級の将軍が二人もいます。そんな人が率いる軍に勝てるとは思えないのです。そして親は子どもを人質にとられているため、動けません。もしも、動けばパルテマス帝国を敵に回してしまうということです」
「……だから、この村には若者がいないのか。強制的に連れていかれるから」
そこで、一つの疑問が湧いた。
何故シルヴィはここにいるのか、と。
「……なぁ、シルヴィ。一つ聞きたいんだけどさ。……別に答えたくないなら答えなくていいから」
「……私がこの村にいる理由ですか?」
聞きたかったことを言い当てられ、少しだけ動揺したが、シルヴィの言葉に俺は黙って頷いた。
「別にそれくらい構いませんよ。私はもうあなたを敵だと疑っていませんから。そうですね……私がこの村にいるのは、一人の女性が村に帰って来たことが原因でした」




