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目の前に現れたタッチパネルが、その通信相手がホムラからだということを伝えてきた為、急いで繋いだ。
『……ダンナ……』
耳に着けたインカムから届いた声は弱々しくなっていた。そして、それが誰からなんてものは、すぐにわかった。
「ホムラか? 無事か!! 無事ならそっちの様子を教えろ!!」
『…………』
必死に呼び掛けるも、通信が続いていることがわかるだけで、それ以上のことはわからなかった。そのせいで自分の中で焦りだけが募っていく。
「……俺は今、扉の前にいる。今すぐこの扉をぶっ壊してそっちに行くから、もう少しだけ待ってろ!!」
本当は壊す算段なんて無かった。唯一あるとすれば、イメージだけの大技。ブースト無しではまともに発動すらしないが、この状況なら、もしかしたら使えるかもしれない。
十華剣式という技において、自分の力を溜めて一気に放つ大技。乱戦じゃ試す機会すら得られないが……迷っている場合じゃないだろう。
すぐに取り掛かろうとした瞬間、インカムから声が聞こえてきた。
『…………ダンナ……逃げてくれ……こいつは……うぐっ!?』
「ホムラ? ……おい、何があった! 返事をしろ!! ホムラッ!!」
逃げるよう言った後、急にうめき声をあげたホムラが無事だとはとても思えなかった。だが、彼女を助けるためには1分1秒が惜しかった。
それなのに、優真は次に流れてきた声に一瞬硬直してしまった。
『……お前はどこの神の眷族だ?』
それはホムラの声ではなかった。
彼女のインカムから男の声が聞こえたことで、俺は自分の怒りが増していくのを感じた。
「…………おい……それは、俺がとある少女に渡したものだぞ? なんで知らない男の声が聞こえてきやがる?」
『質問しているのはこっちだ。もう一度だけ聞いてやる。次で答えなければこれの持ち主を灰にするぞ? ……お前は誰の眷族だ?』
その強引すぎる言葉に苛立ちが増すものの、ここで怒りのままに暴言を吐けばホムラが危ない。だが、何もしなければ、危険な状況は続く。
「……俺は子どもを司る女神様の眷族だ……」
大きく深呼吸した優真はそう答えると、鞘に刀を収めた。




