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「……むにゅっ?」
その柔らかいものを掴む度に、変な音が聞こえる。
柔らかいのだが、布のような感触。
ボール? ……にしては、柔らかいし。
どちらかというとこの布は衣類に使われているような布だと思う。
……というか、生暖かい息が吹きかけられてるような…………。
次の瞬間、「……あん」という若い女性の声が聞こえてきた。
「…………まさか、シルヴィ!?」
驚いた声を上げた瞬間、彼女の細い手が俺の口をふさいできた。
「し……静かにしてください! 見つかってしまいます」
シルヴィは焦っている様子で、声を潜めながら必死に訴えかけてくる。
その様子に並々ならぬ理由があるのだと察し、頷いて了承の意を示す。
シルヴィに「と……とりあえず、この暗闇をどうにか出来ないか?」と聞くと「……まぁ……それくらいなら別にいいかな……」と呟いた彼女は懐から、ろうそくと火を点けるためのマッチを取り出した。
シルヴィが明かりを点けるとこの空間が意外と広いことがわかった。大人30人が余裕で入りそうな空間。しかし、この場所にいたのは、俺とシルヴィの二人だけだった
「ありがとう」
声を潜めているシルヴィに倣って優真も小声で火を点けてくれたシルヴィに感謝の気持ちを伝えた。
気まずい空気で、沈黙が支配する空間。先に口を開いたのは優真だった。
「……そういえばさ、見つかるって誰に?」
その時、一瞬だけ彼女が驚いた顔を見せてきた。
「……本当に何も知らないんですね」
「……ごめん」
「いえ、いいんです。この国どころかこの世界の存在をユウマさんが何も知らないことはわかっていますから」
「……いや、そっちもなんだけどさ……その……」
「なんでしょう?」
「……さっき揉んじゃったからさ……本当にごめん」
照れながら言ったその言葉で、シルヴィの頬が上気したように真っ赤になった。
「なんでなんでなんで! せっかく考えないようにしていたのに~~っ!」
「す……すまん! いや、だって、あんな立派なものを揉ませてもらっておとがめ無しはこっちがもたないって! いっそのこと、ここで罵倒してほしいぐらいなんだ!」
小声で怒りながらポカポカと叩いてくる少女に罪悪感を感じながらも、つい可愛いと思ってしまう。
「うぅ~、私も本当は声を出すのも我慢しなきゃいけなかったのに、あんなはしたない声を出してしまってごめんなさい」
まさか逆に謝らせてしまうとは…………まずい。このままじゃ村の人たちになんか殺されそうだ。
むしろ、罪悪感のせいで死にたくなりそう。
「じゃあ、今度何でも一つお願いを聞くからさ、それで許してほしい!」
「わ……わかりました。そ……それで許してあげます。……本当に何でもいいんですよね?」
「俺に出来る範囲であればね」
その時見せた彼女の顔が妙に嬉しそうだったのは、俺の気のせいだろうか?




